【2月3日 AFP】魚介類を摂取すると脳内の水銀量が増える可能性があるが、水銀の増加が認知症リスクを高める可能性はなさそうだとする研究データが、2日に発表された研究論文で明らかになった。

 米国医師会雑誌(JAMA)に掲載されたこの研究は、平均年齢90歳で死亡した286人の遺体解剖に基づいている。調査の参加者は平均して死亡する約5年前から、質問票を通じて、自分の食物摂取の報告を始めた。

 この結果、魚介類をより多く摂取した人は、脳内の水銀量もより高かった。だが遺体解剖では、脳内の水銀が多い人ほど、脳疾患の兆候が増加する傾向はみられなかった。

 神経毒である水銀は、廃棄物の焼却や石炭火力発電の際に大気や水を経路とし、魚に蓄積される。研究者らは、認知や脳の発達に対する水銀の毒性作用は、魚介類に含まれている必須栄養素のセレンによって、その悪影響が低減されている可能性があるとしている。

 アルツハイマー病発症のリスク上昇に関連性があるアポリポタンパクE(ApoE)と呼ばれる遺伝子変異を持つある特定のグループでは、週に1度以上魚を摂取した人は、脳の疾患の兆候が少ないことを研究者らは発見した。

 米シカゴ(Chicago)にあるラッシュ大学医療センター(Rush University Medical Center)のマーサ・クレア・モリス(Martha Clare Morris)氏率いる同研究の論文は、リスクの高いグループの魚介類の消費量は、特にアミロイドベータタンパク質のプラークおよびタウタンパク質の量において「アルツハイマー病の病理の少なさと有意な相関関係にある」と指摘している。一方、このような防止効果は、この高リスクの遺伝子変異を持たない人々の間ではみられなかった。

 また魚油サプリメントを摂取した人たちは、脳の健康の点では向上も低下もなく、統計的に有意な変化は示されなかった。

 研究者らによれば今回の実験は、脳の健康と水銀レベルとの関係を調べる初めてのもので、実験参加者の大半は白人で、67%が女性だった。実験結果は若い世代やすべての民族には当てはまらない可能性がある。(c)AFP