■「良いコントラストになる」

 50代後半のシルヴィアンヌ・ドガンスト(Sylviane Degunst)さんは2年前、英ロンドン(London)の街を歩いていた時にスカウトの目に留まった。以来、ハイストリートブランドの服やその他の広告のモデルとして引っ張りだことなっている。

 ドガンストさんは、身長はさほど高くないがスリムで、頬骨がくっきりと目立つ。髪は18歳の時から真っ白だという。母国フランスではライターや出版業に携わっていたというが、英国へ移り住んで以来仕事に恵まれず、このモデルという新しい職業を受け入れることにしたと話す。

 AFPの取材にドガンストさんは、「もう頭が役に立たないので、この老いた体を使うことにした。とても楽しんでいますよ」とコメント。そして「若い女の子たちに対抗する気はありませんが、良いコントラストにはなると思います。いろいろ取り交ぜてみるのは面白いですから」と付け加えた。

 米国には、カルメン・デロリフィーチェ(Carmen Dell'Orefice)さんという83歳の現役モデルもおり、ドガンストさんはモデル界の最年長クラスというわけではない。それでも、業界には根強い「ステレオタイプ」が残っていることを指摘し、モデルを始めたばかりの頃は、車椅子に座っての撮影もあり、またある時には白髪を買われてスカウトされたものの、そこまで老けて見えないという理由で結局本採用には至らなかったこともあったと説明した。

 米ニューヨーク(New York)出身でロンドン在住のアーティスト兼ライター、キュレーターでもあるスー・クライツマン(Sue Kreitzman)さん(75)は、高齢女性は公共のあらゆる場でより目立つ存在になりつつあり、もはや「革命」とさえ呼べる現象が生まれつつあるとみている。

「ゆっくりではあるが、それは実際に起きている」と話すクライツマンさんは「セリーヌ」の広告について、「高齢者もここにいる、私たちは美しい――私たちにだって価値がある」ということを前面に打ち出していると評価する。そして「私があの広告で特に良いと思うのは、ジョーン・ディディオンが年の割に若いという演出をしていない点です。彼女は美しく、かつ高齢の女性なのです」と続けた。

 ただ、ファッションショーとなればまた別の話だ。2015年1月には元スーパーモデルのアンバー・ヴァレッタ(Amber Valletta)さん(41)やエヴァ・ハーツィゴヴァ(Eva Herzigova)さん(42)が仏パリ(Paris)のランウェイに立ったが、やはり若いモデルたちの放つ存在感に圧倒されていた。

 それでも、パリで熟年・高齢モデル事務所を経営しているシルヴィ・ファブルゴン(Sylvie Fabregon)氏は、高齢女性モデルに対する需要はますます高まっていることを指摘し、「みんな(そこまで)考えなしではないですよ。世の女性たちは、アンチエイジング化粧品の広告にしわ一つない20歳の女の子が使われているのを見るのはもううんざりなんです」とAFPの取材に述べた。