【9月2日 AFP】米ケンタッキー(Kentucky)州ローワン(Rowan)郡の書記官が1日、連邦最高裁判所の命令を無視する形で、同性カップルが求めた結婚許可証の発行を拒否し、「神の権限」に基づく行為だと主張した。

 同国最高裁は今年6月、全米で同性婚を合法化するという革新的な判決を下したが、キム・デービス(Kim Davis)書記官はこれに反発し、先月半ばからあらゆる結婚許可証の発行を中止していた。

 デービス書記官は先に、自分にはキリスト教徒としての信念があり、最高裁判決に従うことを免除されるべきだと、連邦裁判所に訴えを起こしていた。しかし連邦判事がこれを認めなかったため、連邦最高裁に上告。判決施行の一時停止を要請したが、最高裁もこの訴えを退けた。

 1日には少なくとも2組の同性カップルが、同郡モアヘッド(Morehead)にある小さな郡庁舎を訪れ、デービス書記官に結婚許可証の発行を求めた。カップルの背後には、テレビカメラや記者、同性愛者の権利活動家らも詰め掛けていた。

 現地紙クーリエ・ジャーナル(Courier-Journal)の記者が撮影した動画の中でデービス書記官は、「きょうは結婚許可証の発行を行わない」と宣言。結婚の許可を求めていたカップルらのうちの一人が、同書記官の態度を差別的と非難し、「いったい誰の権限で?」と問いただすと、同書記官は「神の権限で」と答え、次のように続けた。

「私の信条を私から切り離すことはできない」「どういう報いが待ち受けていようとも、私は喜んでそれを受け入れる用意がある。あなた方も審判の時が来れば、その報いを受け入れざるを得ないように」

 カップルが結婚許可証が発行されるまで帰らないと言うと、同書記官は「それならきょうはあなたたちにとって長い一日になる」と言い返した。

 ケンタッキー州のスティーブ・ビシアー(Steve Beshear)知事は7月、あらゆる郡書記官に対し、最高裁判決に従って同性婚を受け入れ、それに応じない場合は辞任するよう通達していた。

 米国自由人権協会(American Civil Liberties UnionACLU)は1日、結婚許可証の発行を拒否した同書記官を法廷侮辱罪に問うことを求める訴えを裁判所に起こした。ACLUによると、裁判所は3日に審問を行う予定だとしている。

 クーリエ・ジャーナル紙は、デービス書記官に結婚許可証を発行してもらえなかった男性の話としてこう伝えている。「受け止めきれない。ばかげている」「結婚するのにこんな思いをしなければならないなんて。2015年のアメリカで」「税金を払ってこんな目に遭い、こんな扱いを受けるとは」(c)AFP