【8月22日 AFP】第15回世界陸上北京大会(15th IAAF World Championships in Athletics Beijing)の男子短距離では、ウサイン・ボルト(Usain Bolt、ジャマイカ)やジャスティン・ガトリン(Justin Gatlin、米国)が金メダルを争う一方、アジアの注目選手たちも、同地域最高のスプリンターを名乗る権利をめぐって激しい争いを繰り広げる。

 有力選手との力量の差を考えれば、アジアの選手にとっては男子100メートルと200メートルの決勝に進出するだけでも、驚くべき快挙と言えるだろう。

 100メートルで9秒58の世界記録を持つジャマイカの巨人、ボルトとの差が開くかもしれないが、中国の蘇炳添(Su Bingtian)とフェミ・オグノデ(Femi Ogunode)によるアジア最強をめぐる戦いも、同種目のつまみとしては十分に魅力的だ。

 ナイジェリア出身でカタール国籍のオグノデは、薬物違反による2年間の出場停止から復帰した第17回アジア競技大会(17th Asian Games、Asiad)に出場し、100メートルでは9秒93、200メートルでは20秒14を記録し、短距離2冠を達成した。

 しかし、地元ファンの大歓声は蘇に注がれるだろう。蘇は、5月に米ユージン(Eugene)行われたダイヤモンドリーグの第3戦で、9秒99を記録してタイソン・ゲイ(Tyson Gay、米国)に次ぐ2位に入るとともに、アジア生まれの選手としては初めて10秒の壁を破った。

 中国南東部の広東(Guangdong)州の田舎で生まれ育ち、当初はトラック界のスター選手たちの荷物持ちに過ぎなかった蘇は、2011年に中国選手権を制してから躍進を果たした。

 一方で、蘇のライバルと目されていた桐生祥秀(Yoshihide Kiryu)は、右太ももの肉離れで今大会は欠場することが決まっている。

 19歳の桐生は、3月に米テキサス(Texas)で追い風参考ながら9秒87をマークしたが、度重なるけがに苦しめられていることもあり、寄せられる期待に応えられていない。

 それでも日本では、すでにサニブラウン・アブデル・ハキーム(Abdul Hakim Sani Brown)という新たな宝石が発掘されている。サニブラウンは、7月にコロンビアのカリ(Cali)で行われた世界ユース選手権(9th IAAF World Youth Championships 2015)で、100メートルと200メートルの金メダルをさらった。

 福岡で日本人の母親、ガーナ人の父親の下に生まれたサニブラウンは、2016年のリオデジャネイロ五輪に向けて経験を積むことを主な目標に、世界陸上では日本史上最年少となる、わずか16歳で200メートルに出場する。

 サニブラウンはすでに栄光を一つ手にしており、世界ユース選手権では200メートルで20秒34を記録して、ほかでもないボルトの記録を破って大会記録を更新した。

 ボルトが持つ200メートルの世界記録19秒19にはまだ遠く及ばないが、サニブラウンにとっては、短距離界の強者たちと肩を並べて走るだけでも、かけがえのない経験になるだろう。

 五輪メダリストのアト・ボルトン(Ato Boldon)氏は先ごろ、コロンビアで見たサニブラウンの走りを、2008年の北京五輪のボルトになぞらえている。

 ボルトやガトリンと同じ空気を吸うという、最高の舞台へ向けて準備を進めるサニブラウンは、日本のメディアに、「自分のすべきことをこなして、世界最高の選手たちに挑みたい」と話している。

 小学生のときにサッカーから陸上へ転向したサニブラウンによれば、最近の好調の秘訣(ひけつ)は、ラップを聴くことと、1日最低12時間の睡眠とのことだ。(c)AFP/Alastair HIMMER