■不平等な適用

 法律上は厳しく見えるむち打ち刑だが、実際は多くの規定が厳密には執行も、遵守もされていない。

 アチェには素晴らしい景観や、サーフィンやダイビングの人気スポットもあり、毎年、少数ながら外国人も訪れる。観光客もシャリーアの適用は免除されず、さらに昨年可決した新法では、イスラム教徒以外にも適用されることになった。だが、実際にシャリーアの下で外国人が罰せられた例の報告はない。またアチェ人は概して、観光客が公共の場で「控えめな」服装をして、いちゃつくようなことをしなければ、彼らを歓迎する。

 一方で、アチェ人の多くはシャリーアの適用が十分でないと思っている。インドネシアで横行する収賄で有罪となった公務員に対しても、むち打ち刑を望む声が上がっているが、大半の人がそれは起きないと思っている。地元の人々は、高官たちの場合は「わいせつな」行為が見つかっても見逃されていると不満を漏らす。例えば2年前、地域で尊敬される指導者が、ある店で家族ではない女性と一緒にいて逮捕されたが、むち打ちは科されなかった。

 学生たちには、そのような慈悲は施されない。屈辱的な試練が1時間以上続いた後、ようやく彼らは連れて行かれた。群衆も解散し、やぐらも解体された。
(c)AFP/Nurdin Hasan

 この記事は、2015年7月13日に英語で配信された、ヌルディン・ハサン氏がAFPに寄稿したコラムを翻訳したものです。