【7月17日 AFP】国外退去を迫られているパレスチナの少女との「ぎこちないやり取り」をめぐり、ドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相(60)に批判が集まっている──。15日に開催された若者との座談会に出席したメルケル首相は「政治とは時としてつらいものなのです」などと、この少女に対して述べていた。座談会の様子は公共テレビを通じて放送された。

 ギリシャの債務危機問題では、その強硬な姿勢で国際社会からの批判を浴びたばかりのメルケル首相だが、今度は、少女に対する冷淡な態度に非難の声が上がった。

 映像は、北部ロストック(Rostock)で15日に開催された10代の若者たちとの公開座談会を撮影したもの。この座談会は、政府主導のプロジェクト「Living Well in Germany」の一環として開催された。

 放送された映像には、行政当局から一時的な滞在許可証しか発行してもらえず、家族とともに国外退去を迫られていると訴えるパレスチナ難民の少女リームさんが、同首相に訴えかける様子が捉えられていた。

 ドイツに保護を求めて4年近くになるリームさんが、「大学に行きたい」と流暢なドイツ語で訴えたのに対し、メルケル首相は、同情を示しつつも、戦争や貧困から逃れ、より良い暮らしをドイツに求める人々全員を引き受けることはできないのですと応じた。

■困難な状況

 座談会はその後も続いたが、数分後、リームさんが泣いていることに気付いたメルケル首相は、「あなたはよくやったと思う」との言葉をかけ、リームさんを優しく慰めた。

 この首相の行動に対し、「よくやったかどうかではなく、非常に困難な状況にあるということが問題なのではないか」と会の進行役が指摘すると、メルケル首相は、「それはわかっている。だからこそ彼女を慰めてあげたいのだ」と強い口調で言い返し、少女が本当に大変な思いをしているということや、他の大勢の人々の状況を非常によく語ってくれたということに対する、自身の気持ちを表したかったのだと主張した。

 しかし、この映像は大きな反発を呼び、同首相には相手を思う心が足りないと批判する意見も出た。ドイツではこの日、ツイッターのハッシュタグ「#Merkelstreichelt(メルケルの慰め)」がトレンド1位となった。しかし、一部には「正直なだけで、冷淡などではない」とメルケル首相の言動を擁護する声もあった。

 ドイツには昨年、約20万人の亡命希望者が入国している。今年は同45万人と推定されている。(c)AFP