【6月18日 AFP】南米選手権のコパ・アメリカ(2015 Copa America)開催中に飲酒運転で逮捕されたチリ代表アルトゥーロ・ビダル(Arturo Vidal)が17日、記者会見を行い、自らの過ちを涙ながらに謝罪した。チームから、追放などの処分は下されなかった。

 拘置所で一晩を過ごしたビダルは、首都サンティアゴ(Santiago)の裁判所へ移動し、そこで裁判官から身柄の拘束を解かれた。しかしその条件として、運転免許は取り上げられ、ミラノ(Milan)にあるチリ領事館へ毎月出頭するよう命じられた。

 イタリア・セリエAのユベントス(Juventus)でプレーするビダルは、チリ代表として母国で開催されているチリ代表としてコパ・アメリカに参戦していたが、16日夜に夫人のマリア・テレサ・マトゥス(Maria Teresa Matus)さんとカジノを訪れた帰り、別の車と衝突する事故を起こした。ビダルの赤のフェラーリは運転席側が激しく破損し、エアバッグも飛び出した。

 事故後、ビダルは夫人とともにいったん病院に搬送されたあと、警察車に乗せられて拘置所へ移送された。警察は、ビダルの血中アルコール濃度について、詳細を明かしていない。

 この事件は大会を混乱に陥れている。開催国チリのファンは、ビダルが同国を史上初のコパ・アメリカ制覇に導いてくれることを切望していた。ビダルはここまでに大会最多の3得点を挙げている。

 ビダルは17日午前に裁判所へ出頭したあと、チリ代表の合宿所へ急いで戻り、涙ながらに事故を起こした責任を認め、チームと国に許しを求めた。

 ビダルは言葉を絞り出すようにしながら、「私は全員を落胆させました」と話した。

「何が起きたのかをお話ししたい。私は昨晩、カジノに行って2杯を飲みました。私は妻の命を危険にさらし、多くの命を危険にさらした。本当に申し訳なく思います」

 負傷したのがビダルと夫人だけだったため、ビダルが収監されることはない。軍警察のリカルド・ゴンサレス(Ricardo Gonzalez)大佐が記者団に語ったところによれば、ビダルは「軽傷」、同乗していた妻は「中程度の負傷」だという。

 チリは、飲酒運転に対して非常に厳しい罰則を科している。裁判所は17日、ビダルの運転免許証を没収し、今後の捜査で有罪が確定すれば、欠格期間は最大で2年に及ぶ可能性がある。

 謝罪会見に臨むビダルの様子は、動画共有サイトのユーチューブ(YouTube)に本人が投稿したビデオメッセージでの姿とは、驚くほどかけ離れていた。

 メッセージの中で、ビダルは「僕のせいじゃない」と自らの無実を主張し、サポーターに感謝したあと、親指を立てていた。

 さらに、地元のラジオ局がインターネットで公開した事故直後の動画では、ビダルが警察官に食ってかかり、「俺に手錠をかけてみろ、あんたらはチリ中を敵に回すことになるぞ」としゃべる様子が映し出されている。

 チリのファンが眠れない夜を過ごした翌朝、代表を率いるホルヘ・サンパオリ(Jorge Sampaoli)監督は、チームのスターを追放することはしないと話した。

「さっき戻ってきたので、様子を聞き、こちらの考えを分かってもらった。間違いは犯したかもしれないが、われわれとしては、チームから追放するほど決定的なものとは考えていないとね」

 以前は問題行動もみられたビダルだが、監督は、自身の就任後は常に「とても立派な振る舞い」を見せていたと話している。

「アルトゥーロのこの事件が、チリに影響を及ぼすことはない。どんな過ちを犯したにせよ、彼はチームの一員だ」

(c)AFP/Guillermo BARROS