【6月11日 AFP】性的暴行を回避する方法についての大学生や同等年齢の女性向けの教育プログラムが、カナダで一定の成果を示しており、性的暴行の被害者女性の数が減少したとする研究結果が10日、発表された。

 これまでの調査では、若い女性の4人に1人は、大学在学中にレイプまたはレイプ未遂の被害に遭遇していることが示唆されていた。

 米医学誌「ニューイングランド医学ジャーナル(New England Journal of Medicine)」に掲載された今回の成果は、カナダの3大学に通う女性900人近くを対象とした調査に基づくものだ。

 調査では、新入生を無作為に2グループに分け、一方のグループには大学構内でのレイプを回避することに関する小冊子を通読させ、もう一方には性的暴行を回避するためのプログラムを受講させた。

 論文によると、1回3時間の講習を4回受講するプログラムでは「知り合いから被害を受けるリスクの評価や危険を認識する際の感情的な障壁の克服、言葉や行動による効果的な自己防衛などのための情報、技術、実践方法」を習得するという。

 さらに論文によると、プログラムでは学生らが「自身の性的な価値や欲求、境界、権利などを知ること」を講師が手助けするという。

Enhanced Assess Acknowledge Act Sexual Assault Resistance ProgramEAAA(評価・知識・行動の強化による性暴力防止プログラム)」として知られるこの教育プログラムは、カナダ・ウィンザー大学(University of Windsor)のシャーリーン・セン(Charlene Senn)氏が10年間にわたり開発を進めてきたものだ。

 EAAAプログラムを受講したグループでは、受講後1年が経過した時点で、対照グループの女性よりも遭遇したレイプ被害の件数が46%、レイプ未遂の件数が63%少なかった。

 セン氏は「EAAA受講グループの女性は、対照グループの女性に比べてレイプ被害の年間リスクが著しく低いことが、今回の研究で分かった」と語る。「これが意味するところを具体的に述べると、EAAA性暴力防止プログラムを女性22人が受講するごとに1件の割合で新たなレイプ被害の発生を防げるということだ」

 セン氏によると、北米で開発された教育プログラムで、数か月を超える期間にわたりレイプ性的暴行の防止に一定の成果を示したのは、EAAAプログラムが初めてだという。

 しかし同氏は、自分たちの行為を思いとどまらせることができるのはレイプの加害者であり、女性が自分に対する性的暴力に関して責められることはあってはならないと強調した。

 ニューイングランド医学ジャーナル誌に今回の論文と同時に掲載された解説記事は、研究の厳密さを評価する一方、レイプを回避するために女性側を訓練することの影響を問題視している。

 米疾病対策センター(US Centers for Disease Control and PreventionCDC)の行動科学者で、性暴力に関する専門家のキャスリーン・バジール(Kathleen Basile)氏は、解説記事の中で「性的暴行を防止するために女性側に重点を置くアプローチを独立して用いるだけでは、潜在的な加害者から責任の矛先をそらすことになる上、部分的な解決策しか提示されない」と指摘している。(c)AFP/Kerry SHERIDAN