【6月2日 AFP】世界気温の上昇幅を2度未満に抑えるとした国連(UN)の目標が達成されたとしても、海洋の生物多様性は劇的な転換を経験するとの予測を示した研究結果が1日、発表された。

 気温の上昇により、低温の海水を必要とする生物種は、その生息域が変わるか絶滅し、温かい海で生きられる生物種に取って代わられることになる。これは漁業にも重大な結果をもたらす。

 今回の研究に参加した仏国立科学研究センター(National Centre for Scientific ResearchCNRS)は「気候変動に迅速に対処しない限り、地球規模での海洋生物多様性の大幅な再構成につながるだろう」と述べ危機感を募らせた。

 英科学誌「ネイチャー・クライメート・チェンジ(Nature Climate Change)」に発表された研究では、地球史の3つの時代区分における生物多様性の変化について、世界初となる調査が実施された。

 第1の時代区分は、鮮新世中期。約300万年前に終わった暖かい時代だ。第2の時代区分は、最終氷期の最寒冷期(最終氷期最盛期、Last Glacial Maximum)と呼ばれる、約2万6500年~2万年前の寒冷な時代。そして、第3の時代区分は、1960年~2013年に至る、人為的な地球温暖化が本格化した時代だ。

 研究チームは、これらの気候パターンを2100年の温暖化予測と比較した。予測の数値は、温室効果ガス排出量の水準に応じて異なる。

 平均気温の上昇幅を約1度と仮定する最も楽観的な予測の下では、2100年までにおきるであろう生物多様性への変化はごくわずかにとどまると考えられるという。

 しかし、今世紀中に最大4.8度の気温上昇が起きるとみられている現在の深刻な温暖化のペースでは、海洋生物種に過去300万年間で最大の変化を引き起こすことが予測された。

 憂慮すべき点は、UN加盟国が2度未満の目標を達成したとしても、2100年までに起きる生物多様性の変化の規模が、過去50年間の3倍に達すると考えられることだと研究チームは指摘する。

 仏リール科学技術大学(University of Science and Technology in Lille)のグレゴリー・ボーグラン(Gregory Beaugrand)氏が率いた今回の研究では、水深200メートルまでの海洋表層部に生息する生物種が対象とされた。表層部は海洋生態系の中で、人間にとって最も有益な部分とされている。

 研究チームは、温暖化による気温の上昇幅が大きくなるほど、生物多様性の変化の規模も大きくなることを、今回の結果は示していると指摘する。そして、生物多様性の変化は新たな生物種が流入する寒帯や温帯の海域でより大きくなるが、「これは、世界の生物種絶滅の埋め合わせにはならない」と警告した。(c)AFP