■政界も巻き込んだ複雑な事件

 しかしドニ・ルクー(Denis Roucou)裁判長は、バニエ被告がベタンクール氏の「混乱した状態」を悪用したと判断。 「彼女は信頼していた人物の言いなりになっていることに気が付いたのだろう」と述べ、親しい友人たちが彼女の心神耗弱に気づかないはずがないと続けた。

 一方、ベタンクール氏に脱税をそそのかしたとして罪を問われたドメストル被告は、搾取とマネーロンダリングの罪で有罪判決を受けた。

 ベタンクール氏から1200万ユーロ(約16億3000万円)の現金と寄付を受け取っていたドメストル被告は、裁判で何度も泣き崩れながら、ベタンクール一家の裕福さに圧倒され、隠し口座と違法行為に足を踏み入れてしまったと証言した。

 ドメストル被告はまた、彼の友人で2007年にサルコジ陣営の会計責任者だったエリック・ブルト(Eric Woerth)氏など保守中道の野党・国民運動連合(UMP)のメンバーらに、現金を入れた封筒を渡すようベタンクール氏を促した疑いがあるとして訴追された。

 この問題は、サルコジ氏の大統領任期の後半に影を落とし、彼が2012年の選挙で敗れた際には、選挙資金法に違反している疑いがあるとして警察の捜査を受けた。

 しかし、サルコジ氏の訴追は2013年10月、証拠不十分で不起訴となった。今回の裁判ではブルト氏の容疑も晴れている。一方、その他の被告は、罰金や懲役などの判決を受けた。

 ベテンクール氏の父ウージェンヌ・シュエレール(Eugene Schueller)氏は1909年に「ロレアル」を設立。ヘアカラーの発売から始まり、世界最大の化粧品会社へと成長した。(c)AFP/Jordane BERTRAND