【5月21日 AFP】ケニア北西部で発見された約330万年前の石器は、人類の歴史の従来説に一石を投じるものだとする研究報告を20日、人類学者チームが発表した。

 見つかった石器は、現在知られている限りで最初期の道具より約70万年古い。最初期の道具はこれまで、現生人類の先駆者である「ホモ・ハビリス(Homo habilis)」が作ったとされていた。

 米ストーニーブルック大学(Stony Brook University)のフランス人研究者、ソニア・アルマン(Sonia Harmand)氏は、AFPの取材に「われわれが発掘した石器は、330万年前のヒト族の祖先が後世に残した技術の痕跡を示すまさに最初の化石だ」と語り、「われわれの発見は、ホモ・ハビリスが最初に道具を作ったとする長年の説を覆すものだ」と続けた。

 道具の製作は、火おこしや農業と同様に、人類の歴史における重要な節目の一つと考えられている。

 従来説では、道具はホミニン(ヒト族、現生種と絶滅種の人類を表す用語)が動物を解体するのに使うために出現したとされている。これによりタンパク質の摂取が始まり、大型の脳への進化が促進されたというものだ。

 だが、石を別の石に打ち付けて道具を作ることは、思考および運動の両スキルが不可欠で、これらスキルについては、ホモ・ハビリスの登場以前の時代に生息していたホミニンの能力を超えたものとこれまでは考えられていた。

 前の時代のホミニンより大きな脳を持つホモ・ハビリスは、現生人類ホモ・サピエンス(Homo sapiens)の祖先で、280万年~150万年前に生息していた。「巧みな人」を意味するホモ・ハビリスは、その明白な器用さに由来する名前だ。ホモ・ハビリスが生息していた時代における最古の道具は、約260万年前のものとされている。

 今回の石器は、ケニア・トゥルカナ湖(Lake Turkana)西岸にある低木地の遺跡「ナチュクイ累層(Nachukui Formation)」から見つかった。同遺跡では1980年代中期以降、驚くべき発見が次々となされている。

 英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された論文によると、打ちつけるために使われた石核や剥片、原石に至るまでの人工遺物149個が同地から発掘されたという。

 後の時代の石器に比べて荒削りではあるが、骨髄を取り出すために骨をたたいて砕いたり、幼虫や昆虫を捕まえるために木の実や枯れ木の幹を強打して殻や表皮を開いたりするのは可能だったかもしれないと研究チームは考えている。