【2月24日 AFP】英物理学者のスティーブン・ホーキング(Stephen Hawking)博士の半生を描いた映画『博士と彼女のセオリー(The Theory of Everything)』で、第87回アカデミー賞(Academy Awards)の主演男優賞に輝いた英俳優のエディ・レッドメイン(Eddie Redmayn)──。

 レッドメインは既にこの役で、ゴールデン・グローブ賞(Golden Globe Awards)や英国映画テレビ芸術アカデミー(British Academy Film and Television ArtsBAFTA)による英国アカデミー賞(British Academy Film Awards)の主演男優賞を受賞していた。そして、22日のアカデミー賞で「3冠」を成し遂げた。

 米アカデミー賞の主演男優賞には、レッドメインの他、『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密(The Imitation Game)』に出演し、レッドメインと同じ英国出身のベネディクト・カンバーバッチ(Benedict Cumberbatch)や、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)(Birdman or (The Unexpected Virtue of Ignorance))』のマイケル・キートン(Michael Keaton)、『フォックスキャッチャー(原題、Foxcatcher)』 のスティーヴ・カレル(Steve Carell)、『アメリカン・スナイパー(American Sniper)』のブラッドリー・クーパー(Bradley Cooper)がノミネートされていた。

 恐れ多いといった面持ちで受賞スピーチに臨んだレッドメインは、「この賞は、世界各地でALSと闘う全ての人ものだ」とホーキング氏が患う筋萎縮性側索硬化症(ALS)について触れ、「この賞は…この賞は、ある特別な一家、スティーブン、ジェーン、ジョナサン、そしてホーキング家の子どもたちのものです」と話した。

 舞台やテレビ、さらにいくつかの大作映画に脇役として出演することで名声を高めてきたレッドメインだが、初めて主演した同作でホーキング博士を演じ、一躍大スターの仲間入りを果たすことになった。

 同じくアカデミー主演女優賞にノミネートされたフェリシティ・ジョーンズ(Felicity Jones)が演じた、ホーキング博士の妻ジェーンさんによる回想録を原作としている『博士と彼女のセオリー』。作品では、悲しい運命の下に置かれた2人の愛の行方が描かれている。

 2人の交際は、ケンブリッジ大学(Cambridge University)に院生として在籍中の1960年代、ホーキング博士がALSと診断される21歳を前に始まった。映画では、博士の悪化する健康状態と高まる名声のなか、1990年代初頭に結婚生活が破綻するまでの2人関係が描かれている。

 同作で監督を務めたジェームズ・マーシュ(James Marsh)氏は、実は別の俳優を博士役に配役するつもりだった。ある晩、レッドメインとパブで意気投合し、言葉を交わすうちに彼を主役に起用することを決め、オーディションの必要はないと伝えて説得したという。もしこの一夜がなければ、レッドメインは今も主演作がないままだったかもしれない。

 その後レッドメインは、運動ニューロン疾患の患者たちを診療するロンドン(London)の病院に4か月間通い、博士の本をできる限り読んだという。そして、その努力が実を結び、映画『マイ・レフトフット(My Left Foot)』で病気を患う主人公を演じてオスカー俳優となったダニエル・デイ・ルイス(Daniel Day-Lewis)に匹敵する演技を見せることができた。

 ホーキング博士は実際に映画を目にした際、自分自身を見ているかのようだったとのコメントが報じられるなど、この作品に強い感銘を受けたとされ、自身のトレードマークともいえる電子音声の使用を認めたという。

 レッドメインは、ホーキング博士が映画を気に入らないのではないかと「恐れて」いたと明かしつつ、一緒の時を過ごせたことは名誉だと話している。だが一方では、初めて博士と直接面会した際、感激のあまり言葉に詰まり、私たちは同じ「やぎ座(Capricorn)」の生まれですねと口走ってしまい、博士から「私は占星術師ではなく、天文学者だ」と返答される一幕もあったという。