【2月10日 AFP】米ニューヨーク(New York)市内の男子生徒を撮影した心温まる1枚の写真がインターネット上で拡散したことがきっかけとなり、この生徒が通う学校に対して120万ドル(約1億4200万円)もの寄付金が集まっている。

 ビダル・チャスタネット(Vidal Chastanet)君(13)と写真家のブランドン・スタントン(Brandon Stanton)氏が、ニューヨーク市の中でも犯罪発生率が最も高い地域の一つであるブラウンズビル(Brownsville)で出会った時、2人は今後何が起きるか知る由もなかった。スタントン氏はニューヨークの一般市民を撮影した肖像写真を、相手の人生を端的に表す発言とともに投稿するブログを運営しており、交流サイトのフェイスブック(Facebook)で1200万人の「いいね!」を獲得している。ブログに投稿された写真のビダル君は、黒のパーカー姿で笑いを押し殺した表情を見せているが、自身が最も大きな影響を受けた人物として校長先生を挙げた発言が紹介されている。

 スタントン氏はこの発言に興味を持ち、ビダル君が通うモット・ヒル・ブリッジズ・アカデミー(Mott Hill Bridges Academy)のナディア・ロペス(Nadia Lopez)校長と会い、教職員や生徒たちの取材を始めた。その中でロペス校長は、貧困層の生徒たちが大志を持ち視野を広げられるよう励ますため、彼らを米国屈指の名門校であるハーバード大学(Harvard University)の見学に連れていくことが願いだと語った。

 学校側はその実現を目指して先月22日にインターネット上で募金を開始した。これまでの募金額は120万ドル以上に達している。寄付金はハーバード大学の見学旅行や卒業生対象の奨学金にも活用される予定で、その最初の受給者はビダル君となる見込みだ。

 ロペス校長は学校改革に取り組んできたが、先が見えない不安感から就任4年で疲れ果て、ビダル君の発言を知るまで仕事を辞めることを考えていたという。米NBCテレビの映像で、ロペス校長は生徒たちに「正直に言って、自分が変化を起こしている実感は今までなかったし、わたしの努力を誰かが気に留めていると思っていなかった」と語っている。

 一連の動きはメディアの強い関心を呼び、ビダル君とロペス校長、スタントン氏は、ロサンゼルス(Los Angeles)で収録が行われた人気テレビ番組「エレン・デジェネレス・ショー(The Ellen DeGeneres Show)」にも出演した。司会のエレン・デジェネレス(Ellen DeGeneres)さんによると、米小売り大手のターゲット(Target)は同校の教室全てに最先端技術を導入し、ブラウンズビルにある他の学校に対しても総額10万ドル(約1200万円)の寄付を表明したという。

 番組でロペス校長はデジェネレスさんに対し、「世界中の人々からの寄付金が多くを物語っており、生徒たちを案じてくれている」と語った。また、スタントン氏は「反響は信じられないほど」だとコメントした。(c)AFP