【1月16日 AFP】アジア歴訪中のローマ・カトリック教会のフランシスコ(Francis)法王(78)は15日、前週フランス・パリ(Paris)で発生した一連の襲撃事件をきっかけに言論の自由をめぐる議論が世界中で広がっていることに関連して、神の名における殺りくを強く非難すると同時に、「宗教を侮辱することはできない」と述べた。

 法王は最初の訪問国スリランカから次のフィリピンへ向かう飛行機の中で、イスラム過激派が仏風刺週刊紙シャルリー・エブド(Charlie Hebdo)本社を襲撃し12人が犠牲になった事件について、同行の記者団から意見を求められた。

 法王は、「神の名において人を殺すのは愚かしい」としながらも、「あらゆる宗教に尊厳」があり、何事にも「限度というものがある」と指摘して、「他人の信仰について挑発したり、侮辱したり、嘲笑したりすることはできない」という考えを示した。

 今月7日、シャルリー・エブド本社を銃撃したサイド(Said Kouachi)とシェリフ・クアシ(Cherif Kouachi)両容疑者の兄弟は、同紙が繰り返しイスラム教の預言者ムハンマド(Prophet Mohammed)の風刺画を掲載したことに激怒していたとされる。その2日後にはクアシ兄弟と連携していたと主張するアメディ・クリバリ(Amedy Coulibaly)容疑者がユダヤ系食料品店に人質を取って立てこもり、これら一連の事件で計17人が死亡、言論の自由が許される範囲について世界中で大きな議論が巻き起こった。

 歴代の前任者の多くに比べると進歩的とみなされているフランシスコ法王だが、言論の自由は信仰に対する敬意があれば自制されてしかるべきものだとして、「言論の自由は権利であり、また義務でもあるが、他人を傷つけることなく表出されなければならない」と諭した。

 5日間のフィリピン訪問で最大のイベントになるとみられるのがマニラ(Manila)で18日に予定されている野外ミサだ。天気は雨の予報で警備面での懸念も拭えないにもかかわらず、最大600万人の参列が見込まれている。関係者によると、実際にこれだけの市民が集まれば、1995年に当時のローマ法王、故ヨハネ・パウロ2世(John Paul II)が同じ場所でミサを行った際の参列者500万人という記録を塗り替えることになるという。(c)AFP/Jean-Louis DE LA VAISSIERE