【1月1日 AFP】イタリアの沿岸警備隊は12月31日、難民768人を乗せて暴走した貨物船を停止させ、同船が海岸の岩礁に激突するのをかろうじて防いだと発表した。

 当局によると、巨大な貨物船の舵はイタリアの「かかと」部分のプーリア(Puglia)地域に乗り上げる方向に設定され、エンジンがロックされていた。

 イタリア沿岸警備隊は、ノーマン・アトランティック(Norman Atlantic)号のフェリー火災の対応に追われていたが、モルドバ船籍のブルースカイM(Blue Sky M)号が岩礁に衝突する進路を航行中であることを知り、夜間にヘリコプター2機を緊急発進させた。

 警備隊員6人が同船に乗り込んでエンジンのロックを解除し、海岸線からわずか8キロメートルの地点で船を制御下に置いたという。

 沿岸警備隊の広報担当者、フィリッポ・マリーニ(Filippo Marini)氏は、「まさに時間との競争だった」と述べた。「エンジンのロックを外すのは難しく慎重を要したが、警備隊員たちはなんとかやり遂げた」

 地元当局者によると、船に乗っていた難民はほぼ全員がシリア人で、子どもが40人ほど含まれていた。また、出産間近の妊婦が破水したという。

 シリア人たちがどこで乗船したのかは明らかでないが、船舶追跡ウェブサイトwww.marinetraffic.comによると、最後の寄港地は12月14日のトルコのコルフェツ(Korfez)だった。

■密航業者が船を放置して逃走か

 この前日の30日には、ギリシャの沿岸警備隊が同船に乗っていた人物から、重武装集団が船を操縦しているとの救難連絡を受け取り、ギリシャ海軍のフリゲート艦1隻、ヘリコプター1機と巡視船2隻が、ギリシャ・コルフ(Corfu)島沖で同船を拿捕(だほ)するために出動した。

 だがギリシャ当局者は、船舶の点検をほとんど行えず、フリゲート艦が公海まで同行しただけだったことを認めた。ギリシャの沿岸警備隊関係者はAFPに「沿岸警備隊が船長と連絡をとったが、船では何も問題ないと言われた」と語った。

 伊当局は、この「船長」が密航業者のリーダーで、ギリシャ側に問題なしと語った後、船から逃走したとみている。船が海軍や商船に救助されることを見込んで、船を放置する密航業者は多いという。

 船がガリポリ(Gallipoli)に到着した後、密航に関与した疑いのある男1人が拘束された。(c)AFP/Nunzio Giove, Angus MacKinnon