【12月21日 AFP】米調査会社IHSは19日、向こう2年間の世界の軍事費は、原油価格の急落に伴い中東の原油輸出国で予算が削減されるものの、アジア太平洋地域の原油輸入国では国庫に余裕が生じるとして、全体として横ばいになる公算が大きいとの見通しを示した。

 北海ブレント原油(Brent crude)先物は6月中旬から50%下落し、節目となる1バレル=60ドル(約7170円)を割り込んだ。IHSがロンドン(London)で公表した調査報告書によると、中東や北アフリカ諸国の国防予算は2011~14年に約30%増加したものの、今後は原油安を受けて従来の水準まで減少する公算が高い。

 これとは対照的に、原油安は「中国やインド、インドネシアの経済成長に正味でプラスの効果をもたらし、財政面で追い風となる」と、IHSエアロスペース&ディフェンス(IHS Aerospace & Defense)の上級国防費アナリストのクレイグ・カフリー(Craig Caffrey)氏は述べている。同氏は「インドネシアとマレーシア、韓国といった域内の主要原油輸入国は、大筋で国防費を引き上げる意向にある。インドと中国では、国防費の伸びが実質ベースで5%超を維持するだろう」と説明した。

 2014年の世界の軍事費は、米国の国防費削減が鈍化し、ロシアの国防費が17.8%増加したことなどから、前年比0.85%増の15億9700万ドル(約1910億円)となり、4年ぶりに増加した。

 報告書は、金融危機による混乱が終わって軍事費の水準は安定するとみられるものの、国際政治情勢が依然として軍事費を左右しそうだと指摘。「世界的な景気動向が軍事費にとって重要である点に変わりはないものの、2014年に起きたウクライナ危機や、イラクやシリアにおける過激派組織『イスラム国(Islamic StateIS)』の台頭は、地政学的動向が軍事費に与える影響が依然として大きいことを物語っている」と述べている。

 IHSはまた、2010年に世界のほぼ3分の2を占めていた北大西洋条約機構(North Atlantic Treaty OrganizationNATO)の軍事費は、19年までにNATOの創立後初めて世界全体の半分以下になるとの予想を示した。(c)AFP