【12月18日 AFP】世界的な供給過剰を受けた原油価格の急落で、主要生産国では地政学的な緊張が高まる中、2015年の原油市場の見通しは不透明だ。

 原油価格は供給過剰やドル高、世界経済の低迷からくる需要の減退を背景に6月以降、ほぼ半値に下落した。11月27日には、世界の原油生産の3分の1を占める石油輸出国機構(OPEC)が定例総会で減産を見送り、現行生産量の維持を決めたことで、下落基調がいっそう強まった。その後、OPECと国際エネルギー機関(IEA)の両方が15年の石油需要見通しを下方修正したことに市場は動揺し、ニューヨークとロンドンの原油先物が5年ぶりの安値をつけた。

■影響は社会不安、政治不安にも

 OPEC総会では、主要生産国のサウジアラビアなど湾岸諸国が日量3000バレルの現行生産枠の削減に強く反対した。アナリストらによると、OPECは米国産シェールオイルの台頭に対抗するため、たとえ石油収入の減少という犠牲を払ってでも、原油価格を低水準に維持したい考えだ。シェールオイルは、原油よりも生産コストは高いものの、今やOPECの市場シェアを脅す存在となっている。

 一方、OPEC内でも湾岸諸国以外のベネズエラやナイジェリア、イラン、イラク、ロシアなどは自国経済の立て直しのため原油高を切望している。

 石油収入に大きく依存するベネズエラでは原油急落の影響で、すでに社会不安や政治不安が広がっている。OPEC減産見送りを受け、ニコラス・マドゥロ(Nicolas Maduro)大統領は政府に予算削減を命じた。

 歳入の半分をエネルギー輸出に頼るロシアでは、ウクライナ危機に関連した欧米による経済制裁に原油急落が加わり、通貨ルーブルが暴落。ロシア中央銀行は16日、ルーブル安に歯止めを掛けるため、主要政策金利の引き上げに踏み切った。利上げはここ1週間で2度目となる。これにより、ロシアではすでに消費財価格の高騰が起きている。

 他方、ノルウェーは原油安を受けて前週、景気の下支えを狙った政策金利引き下げを実施。これは市場の予想外だった。