【12月9日 AFP】2010年に英国人富豪のシュリーン・デワニ(Shrien Dewani)被告が、南アフリカへの新婚旅行中にスウェーデン出身の新妻を殺害した罪で起訴されていた事件で、南アフリカの判事は8日、デワニ被告に無罪判決を言い渡した。

 この事件では2010年11月、デワニ被告の新妻アニ(Anni Dewani)さん(当時28)が、デワニ被告との新婚旅行中にケープタウン(Cape Town)で殺害された。

 検察側は、同性愛者でありながら親族から結婚を強制されたことに反発したデワニ被告が複数の男を金で雇い、デワニ被告とアニさんが乗ったタクシーが襲撃されたと装ってアニさんを殺害したと主張していた。一方被告は、自分は両性愛者であり、アニさんを愛していたと訴えていた。

 事件は「ハネムーン殺人」として知られ、被告の性的指向が大きな鍵を握る裁判として注目を集めてきた。デワニ被告の無罪という判決は衝撃をもって受け止められ、同被告の母親は安堵の涙、対するアニさんの親族は無念の涙を、それぞれ法廷で流した。

 ジャネット・トラバーソ(Jeannette Traverso)判事は、検察側が提示した証拠は有罪認定に必要なレベルから「大きくかけ離れて」おり、デワニ被告の自白を期待して本人尋問を強いるのは不当だと指摘した。

 一方でトラバーソ判事は、この事件では「多くの疑問に答えが出ていない」こと、また被告本人の証言を求める「強い世論」があることは認めた。しかし、殺されたアニさんの親族がデワニ被告は証言しないまま釈放されるべきではないと請願したことについて、自分が下す判決は法に基づいたものであり、感情論の影響を受けることはないと述べた。

 検察側がAFPに明かしたところによると、上訴はできず、デワニ被告はできるだけ早期に南アフリカを出国するとみられている。(c)AFP/Lawrence BARTLETT