【12月3日 AFP】11月30日に行われたスペイン1部リーグのアトレティコ・マドリード(Atletico de Madrid)対デポルティボ・ラ・コルーニャ(Deportivo La Coruna)の試合前に、スタジアム付近で両クラブのサポーター同士が衝突し、1人が死亡した事件で、関与した疑いのある21人が2日、裁判官による尋問を受けた。

 この件については、アトレティコが事件を起こした過激なサポーターグループの追放を決め、43歳の男性サポーターが死亡したと報じられたデポルティボは、本拠地での2試合を一部無観客で開催することを決めている。

 今回の事件は、サポーターグループのメンバーが鉄棒やナイフを所持してアトレティコの本拠地ビセンテ・カルデロン・スタジアム(Vicente Calderon Stadium)付近を徘徊していたことから、スタジアム周辺の安全にも大きな疑問を投げかけている。

 警察関係者によれば、メンバーは裁判所に出頭を命じられ、治安紊乱と警察官に対する暴行について裁判官から聴取された。殺人容疑がかかっている者はおらず、捜査の進展にあわせて別の逮捕者が出る可能性が高い。

 今回の事件には、対戦したアトレティコとデポルティボだけでなく、マドリード(Madrid)に拠点を置くラージョ・バジェカーノ(Rayo Vallecano)とアルコルコン(AD Alcorcon)の過激なサポーターグループ、通称「ウルトラス」のメンバー計200人が関与していたとみられている。

 アトレティコは2日、極右主義者を取り込んでいたとしてウルトラスの1つ、フレンテ・アトレティコ(Frente Atletico)を追放すると発表した。

 アトレティコは発表した声明の中で、「クラブは、フレンテ・アトレティコの正式なサポーターグループとしての地位を即刻取り消し、クラブとのあらゆる関係を断つことを決めた」と述べている。

 クラブはあわせて、警察やそのほかの関係筋からの情報を考慮し、事件への関与で勾留された8人のメンバーを「即刻追放し、無期限で入場禁止とする」とも発表した。

 声明によれば、フレンテ・アトレティコの横断幕をカルデロンで掲示することも禁止されるという。

 一方、デポルティボのティノ・フェルナンデス(Tino Fernandez)会長は2日、3日のスペイン国王杯(Copa del Rey 2014-15)と6日のリーグ戦の2試合で、本拠地リアソール(Riazor stadium)のホームゴール裏1階を閉鎖すると語った。

 またクラブによれば、国王杯の試合開始前に、犠牲者を悼んで1分間の黙とうがささげられる。国王杯と週末のリーグ戦の対戦相手は、どちらもマラガ(Malaga CF)となっている。

 今回の事件を受け、野党の政治家からは保守派の政府に対し、試合前の警備体制について説明を求める声があがっているが、政府関係者は1日、「われわれが事件を黙って見過ごしたことを示唆する証拠は何一つない」と話した。

 しかし、警察官による労働者組合が出した声明によれば、デポルティボのファンの動向を監視していた担当者が政府に対し、デポルティボのウルトラス、リアソール・ブルース(Riazor Blues)のメンバー50人がマドリード入りすると前もって警告していたとしている。

 リアソール・ブルースも声明を発表し、フレンテ・アトレティコとの衝突は前もって計画されていたとする説を否定するとともに、勾留されたメンバーの一刻も早い釈放を求めている。(c)AFP