■天安門事件の亡霊

 香港大学(University of Hong Kong)報道メディア研究センター(Journalism and Media Studies Centre)で検閲追跡サイト「ウェイボースコープ(Weiboscope、微博視野)」を立ち上げた傅景華(Fu King-wa)准教授は、マイクロブログの「新浪微博(Sina Weibo)」上で中国本土の検閲によって削除された投稿の数は27日以降、記録的な水準に達していると指摘している。

 ウェイボースコープでは人気ブロガーを中心に毎日5~6万件の投稿をサンプルとして追跡しているが、ここ数日の削除数は、27日には1万件当たり98件、香港でのデモと機動隊との衝突が起きた28日には同152件、29日には同136件を記録した。傅氏は「削除数は今年で最高だ」と説明。また、習近平(Xi Jinping)国家主席の下でここ最近行われてきた市民社会に対する弾圧に言及し、「7月4日(天安門事件が起きた日)よりも、人権派弁護士の裁判のときよりも、中国国内で他の社会運動が起きたときよりも多い」と語っている。

 こうした中国政府の動きを加速させているのは、現在起きている香港のデモと、89年の天安門での弾圧との比較が語られているからだろうと傅氏はみる。天安門事件では中国当局が戦車を送り込み、首都北京の中心でデモを武力弾圧した。死者は数百人とも千人以上とも言われている。その天安門事件との比較が「(中国)政府とその検閲を刺激している」と傅氏は述べた。

 ソーシャルメディアでの検閲に加え、中国政府は最近、国内での閲覧を遮断するウェブサイトのリストに、デモを詳細に報じてきた香港の英字紙サウス・チャイナ・モーニング・ポスト(South China Morning Post)などを追加した。

 ここ最近行われてきた言論の締め付けについて、反検閲団体「GreatFire.org」は中国で新たに遮断されたウェブサイトの数が史上最多となっている可能性を指摘しており、言論の自由を支持する人々は警鐘を鳴らしている。(c)AFP/Felicia SONMEZ