【9月20日 AFP】腐った生ごみや有毒の工場廃液が600万トンも捨てられている廃棄場から炎が上がったとき、粗末な計画と緩い法規制のせいで危機的状況にあることにタイの人々はようやく気づいた。

 首都バンコク(Bangkok)郊外に散らばる工業地帯の狭間にあるプラエスカ(Praeksa)廃棄場。周辺住民はその悪臭漂うごみ捨て場の閉鎖を長らく求めてきた。そして今年に入り、プラエスカで発生した大きな火災でバンコク東部が8日間、有毒煙に覆われたことで、今やこの廃棄場はごみ問題をめぐる国民的議論の中心に放り込まれている。

 タイ全国で1年間に出るごみの総量は2700万トン。人口1200万を超えるバンコクでは毎日約1万トンのごみが出る。専門家たちは、こうした廃棄物が環境にとって「時限爆弾」になっていると警告。ごみ捨て場のすぐ近くで生活することを余儀なくされている地域も増えている。

 屋外投棄は短期的で安易な解決策にはなるかもしれないが、長い目で見れば、環境や人々の健康に深刻な影響をもたらしかねないと、国連アジア太平洋経済社会委員会(UN Economic and Social Commission for Asia and Pacific)は指摘している。

■屋外投棄場、5分の4は違法

 タイの汚染規制局によれば、同国にある屋外投棄場2500か所のうち、適切に管理されているものは5分の1しかない。残りは有害物質を含む違法投棄であり、周辺の土地や上下水道への漏出や出火といった問題を引き起こしている。規制局によれば、3月半ばにプラエスカで起きたのと同様の火災は、全国の廃棄場で毎月10回ほど起きている。

 問題は規制の実施面に不備があることだと、環境保護団体「タイの生態系に関する警戒と修復」(Ecological Alert and Recovery ThailandEARTH)のニチャ・ラクパニチマニーさんはいう。工場からは毎年190万トンの有害廃棄物が出るが、その行く先は不明だ。工場主たちは安全処分するための費用を払いたくないので法律を破り、彼らから賄賂を渡された業者たちも違法投棄に目をつぶる。

 ラクパニチマニーさんは、汚染された土地での居住を余儀なくされている人々を指し「この問題を押し付けられて耐えているのは、引っ越すこともできない最貧困層だ」と語った。