【9月16日 AFP】18日に実施される英国からのスコットランド(Scotland)独立の是非を問う住民投票では、有権者が通貨や石油収入、雇用、国家債務の負担、欧州連合(EU)への加盟といったテーマに関心を寄せていることから、焦点は経済になると専門家らは指摘している。

 スコットランドの残留を望むデービッド・キャメロン(David Cameron)英首相は、独立した場合、ポンド使用の継続、通貨同盟は認めないとしている。

 また、独立後のスコットランドが英国の債務の負担分をどのように処理するのか、危機に瀕した銀行に信頼できる「最後の貸し手」として供給する巨額資金を、どう工面するのかも問題となっている。

 独立を目指すスコットランド自治政府のアレックス・サモンド(Alex Salmond)首相は、独立すれば経済政策を完全に管理することができ、増税や税金の使い道を自由に決められると主張する。

 さらに、スコットランド沖の北海油田からの収入の見通しについても、見解が分かれている。スコットランド自治政府が、今後5年間で最大387億ポンド(6兆7300億円)の収入を見込む一方、英国は約半分の176億ポンド(3兆600億円)と予想する。

 独立反対派は、スコットランドは国際市場で、連合王国の持つ強みを十分に利用してきたと主張。独立すれば、英国との取引に直接関係するスコットランドの27万人の雇用が危機にさらされるとしている。

 スコットランドに本店を置くロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(Royal Bank of ScotlandRBS)やロイズ・バンキング・グループ(Lloyds Banking Group)などの銀行大手が、住民投票で独立が支持された場合、本拠地をイングランド(England)に移転すると発表したことも、経済に関する懸念を高める要因となった。

 ノーベル経済学賞を受賞した経済学者のポール・クルーグマン(Paul Krugman)氏は、スコットランドが通貨同盟を結ばずにポンドを使用することの危険性について警告する。同氏は米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)に、「2009年以降、欧州で起こったすべての事が、政府を共有せずに共通の通貨を使用することがいかに危険であるかを示している」と述べ、「独立後に英国のポンドを使用すれば、スコットランドはユーロ圏諸国よりも悪い状態になる。ユーロ圏諸国には少なくとも、欧州中央銀行(ECB)の運営方法について意見する権利がある」と指摘した。

 外国為替取引(FX)企業アルパリ(Alpari)のアナリスト、クレイグ・アーラム(Craig Erlam)氏はAFPに対し、スコットランド独立の影響をめぐる懸念は「主に経済関連だ。そのうち最大の問題が通貨であることは疑いがない」と指摘した上で、「もう一つの問題は、EU加盟だ。サモンド首相の主張とは裏腹に、スコットランドにとって大きな問題となる可能性がある」と述べた。

 欧州委員会(European Commission)のジョゼ・マヌエル・バローゾ(Jose Manuel Barroso)委員長は2月、独立後のスコットランドのEU加盟は「不可能ではないとしても、難しいだろう」と述べたことで、スコットランド独立派の怒りを買っている。(c)AFP/Roland JACKSON