【8月21日 AFP】米国人ジャーナリストのジェームズ・フォーリー(James Foley)氏の処刑場面を写したショッキングな動画がインターネット上で公開された一件は、イスラム過激派がソーシャルメディアを活用して展開する「サイバー戦争」の新たな一例にすぎない。

 これまでもイスラム過激派は独自のメディア組織を持ち、音声や動画でメッセージを流布してきた。しかし近年、マイクロブログのツイッター(Twitter)や動画共有サイトのユーチューブ(YouTube)といったソーシャルメディアの登場によって、対立勢力に対する脅迫やメンバー勧誘を直接的に行うという、これまで手にしていなかった能力を得るようになった。

 ソーシャルサイトの運営側はアカウント閉鎖で対抗しているものの、閉鎖されたイスラム過激派系アカウントはたちまち別のアカウント名で再開され、いたちごっこが続いているのが現状だ。

 フォーリー氏がイスラム教スンニ派(Sunni)過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」に斬首される場面を写した動画は19日夜、ユーチューブに投稿され、その信ぴょう性はホワイトハウス(White House)によって20日に確認された。

 こうした処刑動画は少なくとも10年前から存在するが、今回の事件は動画がまたたく間にネット上で拡散された点で、たとえば2002年にパキスタンで起きた米国人記者ダニエル・パール(Daniel Pearl)氏の誘拐・殺害事件などとは一線を画している。

 ユーチューブはただちに問題の動画を削除したが、既に動画ファイルはさまざまな外部サイトに転載され、ツイッターでは動画の一部を切り取ったスクリーンショットが広く共有された。

 ISのメンバーや支持者たちは動画を拡散すると同時に、イラク・アブグレイブ(Abu Ghraib)刑務所での米軍による捕虜虐待の写真を投稿したり、宗教上の斬首の事例を紹介したりしてフォーリー氏処刑を正当化した。動画の中のフォーリー氏はオレンジ色の服を着せられているが、これはキューバのグアンタナモ(Guantanamo)米海軍基地内の施設に収容されたイスラム教徒のテロ容疑者たちの囚人服を模したものだと、ネット上の過激派は指摘している。