【8月20日 AFP】ナイジェリア北部で、イスラム教の教えを厳格に守る貧しい家庭から、強制的に35歳の男性に嫁がされた14歳の少女が、夫を殺鼠(さっそ)剤で殺害した罪で裁判にかけられている。少女を被害者と見る向きが多い一方で、父親をはじめとする事件に近い人々は、被告が夫となった男性と交際した上で結婚の意志を明示していたとして、同意に基づく適齢期の結婚だったと主張している。

 北部カノ(Kano)州警察のスポークスマンによると、同州の州都カノから約60キロ離れたウングワルヤンソロ(Unguwar Yansoro)村に住むワシラ・タシウ(Wasila Tasi'u)被告(14)は4月にウマル・サニ(Umar Sani)さんと結婚してから2週間後、自らが調理した宴会料理に毒物を混入したと供述。犯行動機は「好きでもない男性との結婚を両親から強制された」ことだったという。被告は、毒物を食べて死亡したサニさんら4人の殺害の罪に問われている。

 近く初公判が開かれる裁判では、宗教や文化面でナイジェリア国内を分断している深い溝、中でもイスラム教徒が多い北部におけるイスラム法(シャリーア)の影響に注目が集まっている。サニさんの父親であるサニ・ガルバ(Sani Garba)さん(55)は、「こちらから見れば被告は子どもではない。14歳で嫁に行くのはこのあたりでは普通だ」と語り、「被告を許せない」と付け加えた。

 タシウ被告の弁護を担当しているフセイナ・アリユ(Hussaina Aliyu)弁護士は、被告が未成年であり、取り調べに後見人や弁護士が立ち会っていなかったとして、自白内容は証拠として認められないと指摘。同弁護士はジェサワ(Gezawa)の高等裁判所で裁判を行うのではなく、少年司法制度で対応するよう申し立てたが、判事はこれを拒否した。

 アリユ弁護士はまた、この裁判の争点は、イスラム社会での児童婚が許されるべきか否かにはないことを強調。ナイジェリアで14歳の未成年を成人と同様に殺人で裁くことは不可能だという事実に焦点を絞った弁護を行う方針を示した。