■月の「海」の謎解明にも光

 月の非対称形は、その後に発生した異常な地質学的現象を理解する重要なカギになるかもしれないとガリックベセル氏は指摘する。

「例えば、月の『海』として知られる広大な火山性平原が月の片側にしか存在しないことだ」

「月の海は、夜に月を見た時に暗く見える部分だ。宇宙船に乗って上空を飛行しなければ見えない月の裏側には、このような火山性地形はほとんど存在しない」

 研究チームが今回、月の難問を解決しようとする試みの着想を得たのは、木星の第2衛星エウロパ(Europa)からだった。エウロパは、液体の水の層の上に氷の殻がある構造をしていると考えられている。

「木星の潮汐力は、エウロパの氷殻を伸縮させ、内部で熱を発生させてその形を作っている」とガリックベセル氏は説明する。

「はるか昔、月はこれと同じ状況だった。溶岩層の上に岩の層が浮いている状態だ。地球から及ぼされる初期の強力な潮汐力は、この浮いている殻を伸縮させて熱を発生させ、殻の形状を決めた」(c)AFP/Richard INGHAM