【7月26日 AFP】ドイツの作曲家リヒャルト・ワーグナー(Richard Wagner)の作品を1か月にわたって公演する夏のオペラ祭、バイロイト音楽祭(Bayreuth Festival)の初日の25日、舞台装置の破損で1時間近く公演が中断するという事故があった。

 公演が始まってから約30分後、舞台装置の一部が剥がれて落ちたため、運営側は観客に、修理が終わるまで劇場から出るよう要請した。

 セバスティアン・バウムガルテン(Sebastian Baumgarten)氏(ドイツ)の演出による「タンホイザー(Tannhaeuser)」の公演に観客が戻ったとき、事態はほとんど改善されていなかった。この舞台装置を使う演出は2011年に始まり、観客、評論家の両方から不評を買っている。

 さまよえる騎士であり吟遊詩人でもあるタンホイザーの物語が現代のバイオマスガス工場を思わせる舞台装置で上演された。公演終了時にバウムガルテン氏が舞台上に現れると、ブーイングと口笛にかき消され、それ以外の音はほとんど何も聞こえなくなった。

 同音楽祭の初日はドイツの政界や社会のエリートが観劇に訪れる華やかな場となるのが通例だが、熱烈なワグネリアン(Wagnerian、ワーグナーの音楽の愛好者)として知られ、2005年に首相に就任する前から同音楽祭に通っていたアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)独首相は、今年は過去数年間で初めて姿を現さなかった。日程の都合がつかなかったため、とされている。

 それでもワーグナー自身が設計から建設にまで携わったバイロイト祝祭劇場(Festspielhaus)には観劇者を乗せたリムジンが次から次へとやってきた。

 ワーグナー生誕200年を迎えた昨年は、フランク・カストルフ(Frank Castorf)氏の演出によるワーグナーの代表作「ニーベルングの指環 (Der Ring des Nibelungen)」全4部作の演出が論争の的となったが、今年は新たな演出は予定されていない。

「タンホイザー」上演は今年が最後で、2015年には同作曲家のひ孫娘、カタリーナ・ワーグナー(Katharina Wagner)氏の手による「トリスタンとイゾルデ(Tristan and Isolde)」が上演される。(c)AFP/Simon MORGAN