【7月10日 AFP】世界15か国、約30の科学研究機関からなる気候変動対策プロジェクト「Deep Decarbonization Pathways ProjectDDPP)」は8日、温室効果ガスの排出削減に関する中間報告書を発表し、2050年までに排出量をより安全なレベルにまで削減するためには、革新的なエネルギー改革が必要だと主要国の首脳らに訴えた。

 報告書は米ニューヨーク(New York)で9月23日に開かれる「気候変動サミット」を見据えてまとめられたもの。プロジェクトには、オーストラリア、ブラジル、英国、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、日本、メキシコ、ロシア、南アフリカ、韓国、米国から約30の研究機関が参加。これら15か国が排出する温暖化ガスは全体の約70%を占める。

 報告書は、気温の上昇を2度未満に抑えるとした国連(UN)目標の達成には時間的猶予はないとしながらも、2度を超える気温上昇のリスクは深刻であり、人々の生活に取り返しのつかない害を及ぼすとして、目標を放棄してはならないと警告した。

 また、主な排出源は化石燃料であるとし、交通や建築の分野で革新的な低炭素燃料や代替手段としての電力の導入を促した。

 報告書は、現状のペースでは2100年までに地球の温度が4度もしくはそれ以上上昇するとし、最悪のシナリオでは、海面上昇により飢餓や種の絶滅、居住地の消失など前例のない事態に直面することになると警鐘を鳴らした。

「2度未満」の目標を達成できない、もしくは放棄した場合、以降の目標設定の現実的な見通しはない。そのため、国連目標は温暖化対策の世界規模での取り組みには欠かせないものであり重要だ。

 DDPPは、9月の「気候変動サミット」で実用的な提言を示すことで、2015年12月に仏パリ(Paris)で開催される「国連気候変動枠組み条約(UN Framework Convention on Climate ChangeUNFCCC)」会合での新たな法的枠組みの制定に向けて弾みをつける狙いがある。

 21世紀半ばの地球人口は、現在の72億から95億に膨れ上がることが予想されている。これを受け、報告書は1人当たりのCO2排出量を現在の5.2から1.6トンに削減する必要があるとしている。

 CO2排出量の上位15か国による年間排出量は、2010年の223億トンから2050年には123億トンに減ると予測される。しかし「2度未満」の目標達成にはこれでは不十分だとし、DDPPはCO2排出量の削減に向け各国が導入すべきエネルギー政策3点を挙げた──エネルギー消費の削減につながるスマートエネルギーの交通機関や住宅、オフィスへの採用。火力発電から、低炭素発電の水力、風力、太陽光、地熱、原子力への置き換え。そして、交通や産業の分野で使われる化石燃料のバイオマスなど低炭素エネルギーへの置き換え──。

 報告書は、「CO2の抜本的な削減は一夜で達成できるものではない。特効薬があるものでもない」と述べ、温暖化ガス削減目標を協議するUNFCCC会合に向けて、各国政府は長期的な視野で対策に臨む必要があると訴えた。

 DDPPの中間報告書は8日、国連の潘基文(バン・キムン、Ban Ki-moon)事務総長と次のIPCC主催国であるフランス政府に手渡されている。

 2015年に発表予定の最終報告書ではコストやその効果についての詳細も示される予定。(c)AFP