■ドナーの選択範囲拡大の可能性

 肝臓の保存は次の3段階で行われる。まず、かん流装置を用いて肝臓に酸素、栄養素、保護化合物を大量に送り込む。次に肝臓を冷却し、保存溶液に浸す。最後に、溶液の温度を零下6度まで下げ、肝臓を3日間か4日間保存する。

 論文によると、過冷却後は温度を4度まで徐々に上げ、再び肝臓に大量の酸素と栄養素を送り込んでから移植を行うという。

 この手法の人間への利用を検討できる段階に至るまでには、徹底した試験と改良を行う必要がある。

 論文によると、ドナー臓器を待っている患者は現在、米国だけで約12万人存在する。国立生物医学画像・生物工学研究所(National Institute of Biomedical Imaging and BioengineeringNIBIB)は声明で「体外に取り出した肝臓の保存時間をさらに延長することは、多くの恩恵をもたらすだろう」と述べている。

「この方法では、患者の準備を整えるための時間を多く取れるだけでなく、ドナー側での作業も緩和される。また臓器を目的地に届ける緊急性が軽減されることで、大陸横断および大陸間に及ぶ規模の移植を考慮できるまでにドナーの選択範囲が拡大されるだろう」

 さらに、より適合性の高いドナーがみつかる可能性が高まり、コスト削減につながることも考えられるという。(c)AFP/Mariette LE ROUX