■草の根の宗教間対話の取り組み

 トルコ出身のイスラム教指導者、カディル・サンチ(Kadir Sanci)師は、ドイツ西部ダルムシュタット(Darmstadt)にあるカソリックとプロテスタントの合同教会が、こうした施設を作ることは可能だと夢見るきっかけになったという。

 公募して集まった約200の設計案の中から2011年に建築家ウィルフリード・キューン(Wilfried Kuehn)氏の案が選ばれた。キューン氏は設定にあたり、建築的な問題から神学的な事柄まで多くの難題があったと語る。「(宗教による)違いと普遍的な要素を結びつけることは挑戦だった。宗教を混ぜ合わせることなく、相互に認め合う場にすることが重要だった」

 この施設では、三つの宗教のためにそれぞれ同じ広さの祈りの空間が設けられる。3部屋とも同じ階に位置し、すべての信徒が集まり歓談できる共同の空間へとつながっている。

 ホーベルク牧師は、熟考した末に共同の礼拝室は作らないことにしたと語る。「本来、訪れてくれるであろう人たちを遠ざける可能性があったからだ」という。「それに私たちはより保守的な信徒たちに、異なる宗教同士の対話は可能なだけではなく重要だということを訴えたかった」

 しかし、資金はまだ集める必要がある。提唱者たちはこの部分でも、インターネット経由で不特定多数の人から資金を募る「クラウドファンディング」を通じ、草の根的な方法を貫こうとしている。今月初めに発足した資金集めのサイト「www.house-of-one.org」は、4350万ユーロ(約60億円)を目標額としている。寄付をする人には、とりわけ「れんが」1個を10ユーロ(約1300円)で買ってもらおうとしている。

 シュトルテ氏は「われわれはこのプロジェクトを下から積み上げるものにしたい」という。高位の宗教組織ではなく、各宗教の地元の団体に協力を呼び掛けている。同じ理由から個人の寄付の上限も、目標額の1%の43万5000ユーロ(約6000万円)までとしている。(c)AFP/Frederic Happe