【6月9日 AFP】スマートフォンやポータブル機器が仕事環境を次第に支配するようになってきた。フランスやドイツでは、電子機器の影響が私生活に及ぶのを阻止するため、企業がさまざまな対策を講じている。

 ドイツの大企業はここ数年で、幹部に24時間いつでも連絡がつくことが当然とされることへの負の効果に気付き始めた。仕事に関連した精神疾患が急増し、従業員に対する要求の見直しを迫られている。「バーンアウト(燃え尽き症候群)」は近年の流行語となっている。

 自動車大手フォルクスワーゲン(Volkswagen)などの企業はここ3、4年で、従業員が家にいる間に大量の業務メールが押し寄せないよう、ネット上でせき止めるシステムを導入した。夕方6時15分から翌日の朝7時までは、従業員の仕事用の携帯電話にメールが転送されないようになっている。元々は約1000人いる事務職の従業員が対象の措置だったが、今では国内の全従業員25万5000人のうち5000人程度に適用されている。

 ドイツの連邦労働安全衛生研究所(BAuA)の統計によると、精神的な問題が原因の病欠は2008~11年で40%以上増えたという。

 同じ自動車大手のBMWは別の方法を取っている。BMW人事部の広報担当、ヨッヘン・フレイ(Jochen Frey)氏は「仕事と私生活の間に境界線が必要だと考えているが、働き方における柔軟性の利点を損なうような厳格な規則はいらない」と話す。

 同社では今年から、従業員約3万人以上に対して、上司との相談の上、職場以外の場所や勤務時間外で業務をこなすことを認めている。例えば、メールへの返答に1時間かかった場合、1時間の時間外労働として換算される。ただフレイ氏は「従業員と上司との間にある程度の信頼感と対話があることが前提だ」と指摘した。

 同業のダイムラー(Daimler)は13年12月、休暇中の従業員のメールボックスに届いたメールを削除するシステムを採用。メールの送り主には、その従業員の不在が伝えられ、別の従業員に連絡するようメッセージが配信される。

 通信大手ドイツテレコム(Deutsche Telekom)は10年に、従業員に24時間常に連絡可能な状態を求めるのをやめた。フランステレコム(France Telecom)も同時期に同様の方針を決めた。

 フランスは4月に、明確な労働時間帯がないテクノロジー業界とコンサルタント業界で働く人に「電話を切る権利」を認めた。この法律は、就業時間後は携帯電話やポータブル機器のスイッチを切ることを労働者に義務付けたもので、欧米メディアでさかんに取り上げられた。

 フランスの事務職の全国組合、幹部職総同盟(CFE-CGC)のバーナード・サレングロ(Bernard Salengro)氏は、「法が厳密に適用されるのか、どの程度適用されるのか」について懐疑的だ。(c)AFP/Estelle PEARD