■暗号化を手軽に

「われわれの目標は、暗号化とプライバシーを使いやすくし、主流にすることだ」と、ストックマン氏はAFPの取材に語った。「(ソフトウエアの)インストールは必要なく、全ては見えないところで自動的に行われる」

 暗号鍵を使った電子メールの暗号化技術「PGP」は20年前から存在するが、「あまりに複雑だったため」広く利用されることはなかったとストックマン氏は説明する。

 ここ数か月のテストを終えたプロトンメールは、16日から「フリーミアム(freemium)」(基本アカウントは無料で、追加機能を有料で提供するモデル)で一般向けにサービスを開始した。

「ここ数か月に中国、イラン、ロシアといった国々のユーザーが示してくれたことは、プロトンメールが言論の自由のために重要なツールであるということだ。これをようやく全世界に提供できることを喜んでいる」とプロトンメールは声明で述べた。

 グーグルとヤフーも最近、電子メールを暗号化する取り組みを発表しているが、一部専門家はその取り組みが不十分に終わるだろうと述べている。

「これら大手企業が暗号化を嫌がるのは、自分たちもあなたのことを盗み見しているからだ」と、著名な暗号研究者でセキュリティー会社CO3システムズ(CO3 Systems)のブルース・シュナイアー(Bruce Schneier)最高技術責任者(CTO)は語る。「NSA問題が人々の暗号化強化への誘因となっているといいのだが」

 ストックマン氏は、Gメールなどのサービスは、たとえデータを暗号化していたとしても「(暗号を解除する)鍵をすぐ手元に置いてある。鍵と錠前を一緒に置いていたら、まったく意味がない」と指摘する。

 一方、プロトンメールはスイスにサーバーを置くことで、スノーデン元職員も利用していたとされる電子メールサービス「ラバビット(Lavabit)」のような法的トラブルを回避している。ラバビットは米政府へのデータ提供を拒否してサービスを閉鎖し、法廷侮辱罪に問われている。

 だがプロトンメールは、たとえスイスの裁判所からデータ提出命令が出されたとしても「暗号化されたデータの山を手渡すことになる。われわれは鍵を保有していないし、パスワードも記録していない」と、ストックマン氏は語った。