【5月16日 AFP】ブラジル各地の主要都市で15日、サッカーW杯ブラジル大会(2014 World Cup)の開催に反対する抗議デモや警察官を含むストライキが行われた。連邦警察の全国ストに拡大する可能性も危惧されており、W杯開幕まで1か月を切る中で当局の警備態勢が試練に直面している。

 ブラジル最大都市サンパウロ(Sao Paulo)では、来月12日にブラジル代表対クロアチア代表による開幕戦が行われるスタジアム「アレーナ・デ・サンパウロ(Arena de Sao Paulo)」を目指して労働者支援団体「ホームレス労働者運動(Movimento dos Trabalhadores Sem TetoMTST)」のメンバー約5000人がデモ行進。途中では車のタイヤを燃やす光景もみられた。

 デモはおおむね平和的だったが、午後7時(日本時間16日午前7時)ごろに緊張が高まり、一部の覆面グループに対し警察が催涙弾を使用する場面もあった。デモ隊は複数の大通りを遮断した後、スタジアムの約300メートル手前で集会を開き、「庶民を排除したW杯」だなどと糾弾した。

 サンパウロでは、これとは別に教師や金属産業労働者、地下鉄職員らも抗議行動を展開し、運輸当局によるとサンパウロ都市圏の最大150キロ範囲で交通がまひした。

 この他、首都ブラジリア(Brasilia)、南東部のベロオリゾンテ(Belo Horizonte)やリオデジャネイロ(Rio de Janeiro)、南部ポルトアレグレ(Porto Alegre)、北部マナウス(Manaus)、北東部レシフェ(Recife)など、12開催都市のうち少なくとも10都市で約50のデモがソーシャルサイトを介して呼び掛けられた。

 レシフェでは軍警察の一部もストに加わり、これに乗じた若者たちが店舗から物品を略奪するなど暴徒化した。警察は、全国のデモ参加者を約1万人と推計している。

■「サッカーより大事な問題がある」

 抗議する人々の批判の矛先は、国際サッカー連盟(FIFA)に向けられている。FIFAは自らの利益のことしか考えていないというのだ。デモでは「FIFAとスポンサーは完全免税」「FIFAよ、私の支払いを代わってくれ」「W杯には金を出すのに、給料には出さない」といった横断幕が踊った。

 デモに参加していたカルロス・セラーノさん(32)は「サッカーは大好きだが、それよりも大事な問題が他にある」とAFP記者に語った。ブラジリアのペドロ・アマリウドさん(50)は、「最初はW杯が庶民のためになると思ったが、そうではないことが分かって皆、不満を抱いている」と述べた。

 サンパウロでは、スタジアムに近い一角を1500家族が占拠。「庶民のW杯」と称し、公的資金をスタジアム建設ではなく手頃な住宅の建設に使うよう要求している。ブラジルはW杯開催予算として、これまでに総額110億ドル(約1兆1000億円)超をつぎ込んでいる。

 W杯反対派は、交通機関の整備や教育、住宅整備、医療制度などに予算を回すよう求めており、MTSTでは、政府がW杯開幕までの28日以内に要求に応えなければ開催期間中の抗議行動も辞さないとしている。(c)AFP/Natalia RAMOS