【5月12日 AFP】体に無害な電流を用いて個人の睡眠を変化させ、強い影響力を持つ種類の夢の「明晰(めいせき)夢」を見られるようにする実験に成功したとの研究論文が11日、英科学誌「ネイチャー・ニューロサイエンス(Nature Neuroscience)」に掲載された。

 論文を発表した独ヨハン・ヴォルフガング・ゲーテ大学フランクフルト(J.W. Goethe University Frankfurt)のウルズラ・ボス(Ursula Voss)氏率いる研究チームによると、今回の発見は、思想家らを数千年にわたり魅了してきた分野の「夢を見るメカニズム」を理解する手掛かりになるだけでなく、精神障害や心的外傷による悪夢の治療の助けになる日が来るかもしれないという。

 明晰夢は、2種類の意識の中間にあたる段階だと多くの心理学者は考えている。

 つまり明晰夢は、いわゆるレム(急速眼球運動、REM)夢と、抽象的思考などの認知機能が活動を始める覚醒との中間に位置する。レム夢は当面の現在に関係する夢で、過去の記憶や今後予測される未来の出来事は使われない。

 人間特有の状態と考えられている明晰夢の中では、二次的な意識の要素がレム夢と結びつく。

 明晰夢の特徴は、自分が夢を見ていることに気付き、夢の筋書きをコントロールできる場合があることだ。

 例えば、夢で攻撃者を撃退したり、悲惨な事故を回避したりできるわけだ。