被験者を25ヘルツで刺激すると「夢の筋書きをコントロールする部分の採点が高くなった。これは、被験者が夢の中の行動を自在に変えることができたことを意味している」とボス氏は付け加えた。

 論文には、被験者が自分が見た夢の内容について語った話がいくつか挙げられている。

 そのうちの1つは次のようなものだ。「私は長時間、車を運転していた。すると、以前に来たことのない場所に着いた。そこには人がたくさんいた。何人か知り合いがいるかもしれないと思ったが、皆が険悪なムードだったので、私一人で別の部屋に移動した」

 電池式のtACS装置は、それぞれ脳の前頭頂部と側部に位置する前頭野と側頭野に電流が流れるように装着された。

 前頭側頭に作用するtACSは、統合失調症や強迫神経症で指摘される脳ネットワークの機能不全を修復する助けになる可能性があると論文は示唆している。

 tACSは、レム睡眠中に適用すると、心的外傷後ストレス障害(PTSD)患者が夢の筋書きを自在にコントロールできる立場に自分を置くことで、頻発する悪夢を克服する助けになる日が来るかもしれない、と論文は説明している。

 tACS装置自体は、研究目的のためだけに使用されるように設計された医学的発明品と認識されている。

 だがボス氏は、好むと好まざるとにかかわらず、睡眠時に誰でも明晰夢を見られるようにする同様の装置が一般消費者向けに考案される日が来ることは避けられないと思われると述べている。

 ボス氏は「これは私個人としてはどうでもいいことだが、同様の装置が世に出回るのにそう長くはかからないと確信している。だが脳への刺激は常に、医師による注意深い監視の下で行うべきだ」と注意を促している。(c)AFP/Richard INGHAM