【5月8日 AFP】仏競売会社ピエール・ベルジェ・エ・アソシエ(Pierre Berge & Associes)は7日、ナチス・ドイツ(Nazi)の指導者アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)の自伝、「わが闘争(Mein Kampf)」の希少な初版本のオークション出品を、反ユダヤ活動の監視団体からの抗議を受けて中止したと発表した。

 反ユダヤ主義を監視する「National Bureau for Vigilance against Anti-SemitismBNVCA)」は同オークションに反対し、ヒトラーの自伝を「あたかも詩人やフランスの学術界の一員による芸術作品であるかのように」扱っているとして競売主催者のピエール・ベルジェを批判していた。

 ヒトラーの自伝は、今月16日に予定されている元実業家のフィリップ・ズメロフ(Philippe Zoummeroff)氏の犯罪を題材にした蔵書オークションの一部として出品されることになっていた。競売にかけられれば落札価格は3000~4000ユーロ(約43万~57万円)と見込まれていた。

 同書を所有するズメロフ氏はユダヤ人で、「わが闘争」を入手したのは「何が存在していたのかを示し、卑劣な行為を記録しておくためだ」と説明した。

 フランス国内で「わが闘争」は、「歴史的文書としての側面を持ち、現代史を理解する上で不可欠なもの」とした1979年の裁判所判断を受け、出版が認められている。

 フランスでは先月にも、ヒトラーと腹心の部下だったヘルマン・ゲーリング(Hermann Goering)国家元帥が所有していた品々、約40点を競売にかける予定だったフランスの別の競売会社が、オレリー・フィリペティ(Aurelie Filippetti)文化・通信相の介入で競売を中止している。

 一方、米ロサンゼルス(Los Angeles)では今年初めにヒトラーの署名入り「わが闘争」の2冊セットが競売に掛けられ、6万5000ドル(約660万円)近い価格で落札されている。(c)AFP