【5月2日 AFP】日本では親元から離れた子どもの9割近くが養護施設に入れられており、里親に育てられている割合は先進諸国中、最も低いとする報告書を国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(Human Rights WatchHRW)が1日、発表した。

 報告書によると、生みの親から離れた子どものうち、里親に養育されている子どもはわずか12%で、それ以外の数万人の子どもたちは、人手の足りていない養護施設で生活している。これは経済協力開発機構(OECD)に加盟する先進諸国の中で最も割合が低い。

 例えばオーストラリアでは、こうした子どものうち93.5%が里親の元で暮らしている。その他の国で里親に育てられている子どもの割合は、韓国で43.6%、英国は71.7%、米国で77%となっている。

 HRW日本代表の土井香苗(Kanae Doi)氏は「子どもたちが施設に押し込められ、温かい家庭環境で育つ機会を奪われているのには本当に心が痛む」と語る。「他の先進国では、こうした状況にある子どもたちの大半は家庭的環境で養育されている。9割近くが施設に入所させられている日本の現状は実にお粗末だ」と訴える。

 119ページに上る報告書によれば、親に子どもを養育する意思または能力がないと当局が判断し、家庭から離された子どもは日本に3万9000人いる。

■里親避ける社会

 報告書によると、HRWが3年にわたり実施した調査の結果、児童相談所が「養子縁組や里親制度よりも施設を優先している」ことが分かったという。「児童相談所は、里親よりも施設を好む実親の意向を重視する傾向があり、また、時間がかかり気も遣う養子縁組や里親制度を避けたがる」といい、ある施設職員は「日本では親の利益が子どもの利益より重要だとみなされている」と語ったという。

 また児童養護施設は、入所している子どもの人数を基礎として支給される児童入所施設措置費で運営されているため、入所児童数の維持は施設の利益にもつながっている。

「児童養育に関し日本政府は、役所都合の優先順位を容認し、子どもの最善の利益になる判断をないがしろにしている」 とHRWの土井代表は述べる。「子どものために一生懸命働いている社会的養護関係者が多いことはいうまでもない。しかし適切な解決策として、里親養育と養子縁組が今よりはるかに大きな役割を果たすべきとの認識が必要だ」(c)AFP