【4月28日 AFP】悪化の一途をたどるウクライナ危機の最前線を取材する報道陣は、もはや事態を眺める第三者ではなくなりつつある。

 現地で対峙(たいじ)しいら立つウクライナ軍と親ロシア派武装勢力の双方が、記者たちの出身地や言語を誤解したり、メディアに対する偏見や、党派意識から報道陣を標的とする事例が増えており、ここへ来て記者たちは殴打や拘束、銃による脅迫、増大する敵意全般の対象とされている。

 そうした摩擦の多くが起きているのは、暫定政権に対立する親露派が掌握しているウクライナ東部の、特に両者間で戦闘が起きているスラビャンスク(Slavyansk)市の内外だ。AFPの記者が目撃したところでは、同市で親露派が配置している検問所では武装勢力の興奮が高まっている。27日には、親露派が占拠する同市内のウクライナ国家保安庁(SBU)庁舎近くで、親露派の1人が報道陣に「ここから出て行け」と激しく叫ぶ姿もみられた。

 ウクライナ軍が包囲する中、今回の危機が親露派の神経をすり減らすにつれ、検問所で記者が銃を突きつけられる事態も起きている。前週にはスラビャンスクで米オンラインメディア「バイスニュース(Vice News)」の記者が「スパイ」とみなされ、殴打され、両手を縛られ、目隠しをされた上、拘束される事件もあった。この記者は拘束されていた間にSBU庁舎の地下で、自分よりも長く拘束されている記者たちに会ったと述べている。

 同じく前週は、拷問を受けたとみられる地方議員と大学生の遺体が発見され、拉致された場合の危険性が浮き彫りになった。

 またウクライナ暫定政権寄りの東部地方紙プロ・ゴロド(Pro Gorod)は放火もされている。同紙の事務所は2週間前に暴漢にも襲われ、幹部が足を骨折している。

 27日、スラビャンスクの親露派は報道陣の現地取材にさらに制限を課し、取材を続けるためには地元発行の許可証を取得するよう要求した。

 概して親欧米的なウクライナ西部からスラビャンスク入りしている記者たちに対する扱いは、ますます敵対性を増している。また外国人記者も警戒されている。ロシア人記者のみ、特にロシア国営報道機関の仕事を担っている者たちは温かく迎え入れられている。

 欧米メディアの仕事を担っている複数の取材班は、スラビャンスク周辺でウクライナ軍から奪取した検問所にいる親露派が取材車両の検査を強化し、さらに記者たちのカメラや携帯電話に保存された写真を見せるよう要求するようになったと述べている。

 一方、親露派が掌握する一帯から遠いウクライナ軍側の検問所では反対にロシアの報道陣の取材者が綿密に検査されている。(c)AFP/Marc BURLEIGH