■「チャンスを逃せば、負けるのは自分」

 3.それなりに年季の入ったチェルシーファンであれば、1998年のW杯フランス大会(1998 World Cup)の決勝トーナメント1回戦、アルゼンチン対イングランドの試合はよく覚えているだろう。その試合に選手として出場していたシメオネ監督は、イングランドのアイドル、デビッド・ベッカム(David Beckham)をオーバーリアクションで退場に追い込んだ。

 シメオネ監督は2002年、英紙ガーディアン(Guardian)のインタビューで「私がタックルに行った」と切り出し、次のように語っている。

「その後に2人ともピッチに倒れた。立ち上がろうとした時に後ろから蹴られた。だから私はそれを利用した。あの状況であれば、誰だって私と同じやり方で利用してやろうと思ったはずだ。退場になることもあれば、そうでないこともある。あの時は運悪く、イングランド代表は選手を1人失った。とにかく、人生ではチャンスがあればそれを活用するのが当たり前だ。訪れたチャンスを逃していたら、負けるのは自分の方になる」

 4.シメオネ監督は現在、既成概念にとらわれない考え方で知られている。なかでもとりわけ独創的なのが試合前の準備で、3月29日のアスレティック・ビルバオ(Athletic Bilbao)とのリーグ戦でも、監督のその能力が発揮された。シメオネ監督は、スペインのパラリンピックスキー代表で、ジャーナリストでもあるイレーネ・ビシャ(Irene Villa)を招き、試合前に選手にはっぱをかけてもらった。ビジャはまだ12歳だった1991年、「バスク祖国と自由(ETA)」のメンバーが起こした爆破攻撃で両脚と片手の指3本を失っている。

 監督は後に英紙デーリー・メール(Daily Mail)のオンライン版「メール・オンライン(Mail Online)」で「勝利と敗北は紙一重で、懸命に戦えば、それだけ勝利を得られる可能性は増すということだ」と語っている。

 この作戦が功を奏したのか、アトレティコはビルバオから2-1の逆転勝利を収め、同時にリーグ首位を守った。

 5.試合前日のホテルでのチームミーティングは、就寝時間の直前に行うことを好む。監督がメールオンラインに語ったところによれば、「子供と同じで、選手ももう眠たいという時間の方が話を聞く」のだという。(c)AFP