【3月1日 AFP】緊急医療援助団体「国境なき医師団(Doctors Without BordersMSF)」は2月28日、ミャンマー政府から同国内での全活動の停止を命じられたと明らかにした。

 国境なき医師団は、紛争が相次いでいるミャンマー西部のラカイン(Rakhine)州で一次医療(プライマリー・ヘルスケア)を提供するとともに、同国全土で後天性免疫不全症候群(エイズ、AIDS)や結核の患者の治療にあたっている。

 国境なき医師団は声明で「この一方的な決定に衝撃を受け、ミャンマー全土でわれわれの治療を受けている数万人の患者の運命を強く懸念している」と述べ、医療活動再開について政府と交渉中だと付け加えた。28日には、ミャンマーにおける同組織の22年にわたる医療活動の歴史の中で初めて全国の診療所が閉鎖された。

■ロヒンギャ人治療に批判

 1999年にノーベル平和賞を受賞した国境なき医師団は、ミャンマーに3万人以上いるヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者やエイズ患者に医療を提供している最大の団体だ。

 国境なき医師団は、無国籍のイスラム教徒で、貧困に苦しんでいるロヒンギャ(Rohingya)人が厳しい移動制限下で暮らすバングラデシュとの国境に近い複数の辺地で一次医療を提供している。

 国境なき医師団が、多数のロヒンギャ人が殺害されたと報じられた場所の近くにある診療所で負傷者を治療したと数週間前に明らかにして以来、同団体への批判が高まっていた。ミャンマー政府は大量殺人があった事実を強く否定している。

 治療の際にロヒンギャ人を優先したとの批判に対し国境なき医師団は「医療倫理と中立・公正の原則に従った」としている。(c)AFP