■新興市場への窓口

 調査機関グローバル・エクイティーズ・リサーチ(Global Equities Research)のアナリスト、トリップ・チョードリー(Trip Chowdhry)氏は買収を「とても賢明で不可欠なものだった」と分析する。なぜならばワッツアップはインドなどの新興国で依然として一般的な「フィーチャーフォン(スマートフォンではないが高機能な従来型の携帯電話)」でも利用できるからだ。

「発展途上国の大半では、大多数がスマートフォンを買う余裕がないので、今もなおフィーチャーフォンが使われている。フィーチャーフォンとスマートフォンで同じようにちゃんと動作するアプリはワッツアップだけだ」

■広告展開の選択肢

 ドイツ銀行(Deutsche Bank)アナリストのロス・サンドラー(Ross Sandler)氏は「世界の携帯端末市場のトップ企業としての地位を固める」買収だったと言う。

 フェイスブックは現時点ではワッツアップに広告を表示する計画を持っていないが、今後計画が変わる可能性もあるとサンドラー氏は指摘する。「利用者が携帯端末でのネーティブ広告(コンテンツと区別の付きにくい広告)に慣れてきて、また、さまざまな収益戦略の質が向上すれば、(ワッツアップへの広告表示の)機会が生じるだろうとみている」とサンドラー氏は顧客向けのメモで述べた。

■グーグルに対する防衛

 調査会社IHSのジャック・ケント(Jack Kent)氏は、「競争上の脅威を無力化する」買収だったと述べる。「フェイスブックの考えを理解するためには、フェイスブックが買収に支払った金額よりも、フェイスブックがワッツアップを買収しなかった場合のコストに注目する必要がある」

「フェイスブックは、ワッツアップの1か月あたり4億5000万、1日あたり3億1500万のアクティブユーザーを、グーグルのような競合他社の手に渡すという危険を冒すわけにはいかなかったのだ」