■V字型でエネルギー節約

 ガンやペリカンなどの群れをなす種類の鳥がV字型編隊で飛行する目的については、前にいる仲間が作り出す空気の流れに乗じることでエネルギーを節約するためというのが、科学者らの長年の結論だった。それでも、それがどれほどの精度で達成されているかについては、これまで解明されていなかった。

 ポルトガル氏は「V字編隊を形成する個々の鳥の間の空気力学的な相互作用を特定し、編隊内の鳥が吹き上げを捉えるために用いるメカニズムを記録したのはわれわれが初めて」と述べた。

 英国、オーストリア、ドイツの国際研究チームが行った実験では、オーストリアのウィーン動物園(Vienna Zoo)で、人の手によってひなから飼育されたホオアカトキ14羽が使われた。

 このホオアカトキ14羽は、季節移動のために超軽量飛行機の後について飛行するよう人間の育ての親から教え込まれており、イタリアにある越冬地までの移動経路も学習している。トキたちと育ての親は、実験のためにオーストリア・ザルツブルク(Salzburg)を飛び立ち、イタリア・トスカーナ(Tuscan)地方まで飛行した。

 今回の実験では、トキの背中に軽量のGPS(全地球測位システム)探知機と、羽ばたきの頻度と強度を測定する「加速度計」を取り付けられ、この飛行中の43分間で合計18万回の羽ばたきが測定された。

 その結果、驚くべきことに、後続する鳥の翼の羽ばたきは、先行する鳥が作り出す空気の流れのパターンをほぼ正確に追従していることが分かった。空気の流れのパターンは、翼が上下に羽ばたきする際に形成される連続した波として視覚化できたという。