【1月14日 AFP】エジプトで軍が主導する暫定政権が起草した新憲法案の是非を問う国民投票が14日、開始された。投票期間は15日までの2日間。

 昨年7月に事実上の軍事クーデターでムハンマド・モルシ(Mohamed Morsi)前大統領を解任した軍主導の暫定政権は、エジプト全土5300万人の有権者に対し、投票所に一斉に足を運んで新憲法を承認するよう呼び掛けている。

 新憲法案では、モルシ政権下の憲法に盛り込まれたイスラム色の強い文言が避けられ、支持派は女性の権利や言論の自由が強化されていると評価している。一方、新憲法案は向こう8年間の国防相の任命権を軍に付与するなど、軍の権限を強化する内容になっている。

 暫定政権は、賛成が多ければ自らの正統性が強化されると期待しているが、投票率自体が低いと、モルシ前大統領の出身母体ムスリム同胞団(Muslim Brotherhood)など暫定政権を認めない勢力を活気づけると懸念している。

 ムスリム同胞団を中心とするイスラム系団体の同盟は、国民投票のボイコットと期間中の「理性的、平和的な抗議行動」を呼び掛けている。こうした動きに対し、内務省は投票妨害行為への対決姿勢を鮮明にしている。

 またモルシ前大統領を追放したエジプト軍トップのアブデルファタフ・サイード・シシ(Abdel Fattah Said al-Sisi)軍最高評議会議長兼国防相は、新憲法案が承認されれば実施される大統領選に出馬が見込まれているが、側近筋によれば、同氏は今回の国民投票を自らへの支持を測るバロメーターともみなしているという。

 シシ国防相は14日の投票開始後、警備態勢を確かめるために投票所となっているカイロ北部の学校を訪れ、兵士たちに「全力で取り組んでほしい。国民投票を完璧に守らなければならない」と声を掛けた。

 14日の投票開始直前には首都カイロ(Cairo)の裁判所前で、国内の二極化を強調するかのように、小規模な爆発が発生した。警察によれば、裁判所の玄関が破壊されたが、負傷者は出ていない。

 各地の投票所には警察や軍、数十万人が動員されており、武装勢力による襲撃や、抗議行動を恐れて有権者の出足が鈍る可能性もある。ただし、投票率は未知数だが、憲法案はほぼ確実に承認されると見込まれている。(c)AFP/Samer AL-ATRUSH, Haitham EL-TABEI