【12月10日 AFP】大型の台風30号(アジア名:ハイエン、Haiyan)の直撃から約1か月が経過したフィリピンでは、いまだ多くの被災者ががれきのなかに設置した仮設小屋での生活を送っている。専門家らは復興には数年を要する見込みとしている。

 被災直後は、がれきのなかで寝食をする人々の姿に、世界から緊急支援の物資が殺到した。しかし今後は長期的な再建のための支援にシフトしていく。

「多くの人が緊急支援を受け取ったが、これはまだ始まりにすぎない」と国連人道問題調整事務所(OCHA)のマシュー・コクラン(Matthew Cochrane)報道官は、甚大な被害を受けた同国レイテ(Leyte)島東部タクロバン(Tacloban)でAFPに語った。

 フィリピンは毎年20以上の台風に見舞われるが、先月の30号は史上最大の破壊力を誇り、同国中部・東サマール(Eastern Samar)州では、最大瞬間風速315キロを記録した。さらに同州およびレイテ島の海岸沿いにある貧困地域では、大規模な高潮による被害が拡大。波の高さは2階に届くほどで、100万戸以上が全半壊した。波は学校などの避難所まで押し寄せ、多くの人が犠牲となった。

■最大の優先事項は住居の建設

 12月8日で台風の直撃からちょうど1か月が経過した。コクラン氏は同日、最大の優先事項は約50万世帯のための新しい住居建設と語ったが、これには約5年の歳月と数十億ドルの費用を要すると試算されている。一方、すでに多くの被災者が避難所を出ており、中には拾い集めたがれきなどを使って再建を始める人もいる。

 18歳のロニー・メラフロアさんは、竹を使って間に合わせのクリスマスツリーを作った。ツリーは彼と家族が暮らす木造の小屋脇にある割れたコンクリートとタイルのがれきの上に立っている。メラフロアさんは「家の中には置けなかったけど、クリスマスは祝いたい」とコメントした。両親と7人のきょうだいと共に近くの学校に避難して台風の被害を免れたという。

 他方で政府や支援団体は、生活の糧を失った農家数万人の救済を急いでいる。次の収穫のためには今月中に田植えを行う必要があるため、田んぼからのがれき撤去や水路の整備などが急ピッチで進められている。

「これは食料の確保において重要な問題だ。今月中に終わらせることは大きな挑戦だ」と英国を拠点とする国際NGOオックスファム(Oxfam)のイアン・ブレイ(Ian Bray)報道官はAFPに語った。

 支援は被災者の心の傷を癒やすためにも必要だ。「このような災害では物理的な再建だけではなく、心の傷を治すことも求められる」と国際赤十字社(International Federation of the Red Cross)のパトリック・フラー(Patrick Fuller)報道官は述べている。(c)AFP/Karl MALAKUNAS