【11月26日 AFP】中国政府は今月、30年以上続けてきた「一人っ子政策」の緩和を発表したが、高齢化を含む人口問題の「時限爆弾」への対策に取り組むのであればより抜本的な改革が必要だと、専門家たちはみている。

 専門家らによると、中国の人口問題が危機的状況に向かっているため、緩和が導入されるのは時間の問題だったという。中国共産党は15日、両親のいずれかが一人っ子である場合、2人目の出産を認めると発表した。

 米シンクタンク「ブルッキングス研究所(Brookings Institution)」が北京で運営する清華・ブルッキングス公共政策研究センター(Brookings-Tsinghua Centre for Public Policy)の王豊(Wang Feng)所長は「今から1年後に、さらなる緩和あるいは政策そのものの廃止が発表されていたとしても驚きはない」とし、さらに、「政府は今様子をうかがっているところだ。一人っ子政策が誰のためにもならず、廃止すべきなのは政府もわかっている」と述べた。

 推定によれば、中国の出生率は現在、1.5人。人口動態を安定化させるには2.1人が必要だといわれている。

■「緩和」では人口問題に効果無し

 中国の人口動態の専門家であり、同分野に関する著書もある王氏は、今回の緩和は「一人っ子政策」が施行されて以来、最大の変化であり、廃止へ向けた重要な第一歩であると指摘する。

 だが同時に、王氏によれば、一人っ子政策にはすでに例外があるために、今回の緩和の影響を受けるのは、約1000万組の夫婦にすぎず、中国の全人口13億5000万人からみれば、わずかでしかない。王氏は「出生率はそれほど上がらないだろうし、中国の人口動態に大きな変化はもたらさないだろう」と語った。現在、例外とされているのは、地方の家庭で第一子が女の子だった場合、少数民族、両親がいずれも一人っ子の場合などだ。

 また、2007年の調査報告によれば、すでに国内の37%の夫婦が例外の条件に当てはまっているが、そうした夫婦とさらには裕福で罰金を払って2人目をもうける夫婦がいることから、発表された緩和による効果は限られていると専門家たちは指摘する。

■急速な高齢化で人口問題が危機的状況に

 さらに専門家たちは、出生率低下の原因は一人っ子政策だけではないと指摘する。乳幼児死亡率の低下が世界的に出生率の低下を招いているためだ。また、中国の不妊率も過去20年で4倍に増えた。さらに家賃や医療費、教育費の上昇で、2人目の子どもをもうけることが許されている夫婦でも1人だけの選択をすることもある。

 4億人の出生を抑制したとされる一人っ子政策だが、当局は長らく、同政策は中国の経済成長と繁栄のカギだったと主張してきた。しかし同国の労働者人口は昨年、1963年以来初めて減少。一方で高齢者は急増しており、国連(UN)によれば、2050年には60歳以上が全人口の30%を占める見込みだ。この割合は、2000年にはわずか10%だった。

 一人っ子政策は、避妊手術や妊娠後期の堕胎を強制するような残酷な政策だとして国外から非難されてきた。人権団体は今回の緩和を歓迎してはいるが、政策そのものが廃止されたわけではないと批判の姿勢を維持している。

 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(Human Rights WatchHRW)香港支部のニコラス・ベクリン(Nicholas Bequelin)氏は「廃止へ向けて一歩前進したのは認めるが、一人っ子政策は子どもをもうける権利をいまだ不当に制限しており、人権侵害を伴っている」と主張した。(c)AFP/Felicia SONMEZ