【11月20日 AFP】欠陥遺伝子の修復によってイヌの血友病の治療に成功したとする研究論文が19日、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された。ヒトの血友病治療に向けた前進が期待される。

 遺伝性の出血性疾患である血友病の中で患者数が最も多いA型血友病は、母系を通じて遺伝する1個の遺伝子の機能異常が原因で「第VIII因子」と呼ばれる血液凝固タンパク質が欠乏する病気で、男性の約1万人に1人が発症する。

 現時点では、治療法は存在しない。出血が止まらない場合は、凝固因子の注射で治療するが、注射された凝固因子に対して患者の免疫系が反応を示す場合もある。

 米ウィスコンシン医科大学(Medical College of Wisconsin)のデービッド・ウィルコックス(David Wilcox)氏率いる研究チームは、イヌを対象とした試験で、ウイルスを微小な「トロイの木馬」として利用した。

 研究チームは、正常に機能している遺伝子「ITGA2B」を、無害のウイルスの中に組み込み、血友病にかかっているイヌ3匹に「感染」させて、血小板を作る幹細胞内に正常遺伝子を導入した。血小板は、血液を凝固させる極小の細胞片。

 この治療を施したイヌのうちの2匹では、最高水準の量の第VIII因子が生成され、2年半の調査期間を通して、重度の出血は一度も見られなかった。

 論文によると、新しい遺伝子を導入された後は3匹とも、自身の免疫系を抑制するための薬を必要としなかったという。(c)AFP