【10月22日 AFP】スティーヴン・キング(Stephen King)のホラー小説「キャリー(Carrie)」をブライアン・デ・パルマ(Brian de Palma)監督が映画化してから40年近く。あの最高傑作が再び映画化され、18日に全米公開された。

 今回メガホンを取ったのは、キンバリー・ピアース(Kimberly Peirce)。ピアースは1999年の監督作『ボーイズ・ドント・クライ(Boys Don't Cry)』で、ヒラリー・スワンク(Hilary Swank)にアカデミー賞主演女優賞をもたらした。

 デ・パルマが監督を務め、女優シシー・スペイセク(Sissy Spacek)が主演した1976年の『キャリー』は大ヒット。その2年前に出版され、当時はまだ無名だったキングの小説にも注目が集まった。

 今回の新作で主演を務めるのは、16歳のクロエ・グレース・モレッツ(Chloe Grace Moretz)。超能力を使って、クラスのいじめっ子や母親に復讐する少女を演じる。頑固な母親役を演じるのは、アカデミー賞ノミネート経験もあるジュリアン・ムーア(Julian Moore)だ。

■現代的な解釈を加えたピアース監督

 ピアース監督は公開前に米ロサンゼルス(Los Angeles)のビバリーヒルズ(Beverly Hills)で行われた記者会見で「誰もがそうであるように、私も最初は怖じ気づいた。デ・パルマ監督版が大好きだから」と語った。「だからまずデ・パルマ監督に電話した。そしたら『やるべきだ』と言ってくれた」

 彼女はまた、現在の学校やネット上で起きているいじめについて触れ、「私はこの小説に現代的な解釈を加えて撮ることができると思った」と語った。「母と娘の関係も強調して描きたかった。だって、それがこの物語の核心だから」

 ピアース監督はさらに、キャリーがどのようにして自分に超能力があることに気付き、その力を高めていったかも描きたかったと言う。「これはクラスで目立たない少女の話。でも彼女は自分の能力を発見する。それは私たちが作家としての才能や、映画監督としての才能や、それぞれ自分だけの才能を見つけるのと同じ。自分がもつ才能を見つけたとき、人生捨てたもんじゃないって思える」

 しかし、キャリーはその才能を学校のプロムパーティーで殺人に利用する。

 米国では、昨年12月にコネティカット(Connecticut)州ニュータウン(Newtown)のサンディフック小学校(Sandy Hook Elementary School)で銃乱射事件が起きたばかり。児童20人を含む26人が犠牲になったあの惨劇はまだ記憶に新しい。1999年にコロラド(Colorado)州のコロンバイン高校(Columbine High School)で銃乱射事件が起きて以来、米国では同様の悲劇が繰り返されている。

 そのためピアース監督は慎重を期したと語る。「彼女(キャリー)が自分の力を完全にはコントロールできていないように描いた。なぜなら、完全にコントロールできていたとすると、彼女がプロムでやったことの責任をもっと問われることになるから。コロンバイン事件の後の世間の空気を考えると、彼女がまだ自分の能力の使い方を模索しているように描くことが大事だと思った」

■孤独が生む悲劇

 キャリーの信心深く厳格な母親マーガレット・ホワイトを演じたムーアは、原作小説も映画も、孤独感がもたらす悲劇を描いていると語る。「これは社会からの隔絶が人にどんなダメージを与えるかという物語。マーガレットは社会と距離を置いて心を病んでしまったし、キャリーは学校でも家でものけ者にされてきた。そんな状況から生まれた怒りが見えるはず」

「ニュートンで起きた事件を軽く見るつもりはない。でも犯人の少年は社会から隔絶されていた。心の病を患っていて、ずっと孤独だった。社会からのけ者にされた人たちは危険な状況にあるのよ」

 キャリーの母親は本当に社会のはみ出し者だと、ムーアは言う。「とても過激なキャラクターだけど、すべては心の問題に原因があるように演じたかった。虐待にしてもそう。自傷行為は私が思いついたものなの」

「子供が一番恐れているのは、親を失うことでしょ。親が自分を傷つけ、それは子供のせいだと言ったとしたら、子供にとっては耐え難い虐待だわ」

 ピアース監督は母娘の関係に、とくに注意を払った。2人の女優も、決して愛のない関係ではないと考えた。「お互いに相手しかいない。母娘2人っきりの家族だから」(ムーア)

 モレッツは「キャリーは怒りに満ちている。でも母親からの愛情も受け、それと戦っていた」と語った。「そこがとても怖いところ。母親は彼女のことを何とも思っていないわけじゃない。過保護で愛がありすぎるという関係は、無視される関係より怖い」

「そしてその愛は執着になるの」 (c)AFP/Romain RAYNALDY