【10月17日 senken h】「結末はいかに…」という前提で挑む、観賞作品を選ぶ時間の楽しさ。そして思い思いの仮説を立て、スクリーンを前にする瞬間のトキメキ。そのどれもが映画の普遍的なだいご味かもしれない。今回ピックアップした3作もまた、そんなプロセスの後に待ち受けるシークレットに期待大。

■『危険なプロット』
絶妙なキャスティングで作品をよりパワーアップさせ、観客の心と視線をとらえるフランソワ・オゾン監督。次なる一手「危険なプロット」は、まさにその通りの俳優とストーリー展開で、観る者をエンディングまで釘づけにする。スマホ時代への風刺も込めてか、作文と言えば短文ばかりの生徒に嘆く高校の国語教師(ファブリス・ルキーニ)。だがある日、ほれ込むほどの文才を持つ生徒に出会い、なんと個人指導を申し出る。思いもよらぬ方向へと展開していく2人の様子は、時にコミカルで予測不能。危険をはらむほどのミステリアスな魅力を放つ生徒役を新鋭エルンスト・ウンハウワーが好演。

■『陽だまりの彼女』
 恋はミラクルといった表現がすんなりとフィットする「陽だまりの彼女」。鉄道オタクで、恋に奥手な新人広告代理店マン、浩介(松本潤)にとっても同様だ。偶然の巡り合わせとも言うべき物語の始まりは、クライアントとの打合せの場で中学校時代の同級生、真緒(上野樹里)と10年ぶりの再会。淡い恋の思い出がある2人の間に、仕事を通じ協力しあう過程で芽生えるオトナの恋は、永遠の愛の誓いへとゴールしたのだが…日本ポップス界のマエストロ、山下達郎による本作のためのオリジナル「光と君へのレクイエム」が、胸キュン度数を上昇させそう。

■『もうひとりの息子』
 ひょっとするとミラクルな出会いの究極は、親子ではないかと常々思う。出生時の取り違えというテーマが軸となりストーリー展開する「もうひとりの息子」は、そんな思いをさらに奥深く、よりヒューマンな視点へと導く作品だ。それぞれの異なる文化(イスラエルとパレスチナ)の家庭で成長し、未来への夢を抱く18歳の息子たち。彼らが直面した真実と、迫られる選択の行方。情感豊かに演じる俳優たちに、感情移入するのでは。そして家族の絆の温もりを感じ取れたら…。 (c) senken h / text:宇佐美浩子