【7月17日 AFP】2012年にイタリアで死者32人を出したクルーズ船「コスタ・コンコルディア(Costa Concordia)号」の事故で、船長の責任を問う裁判が進行する中、今も座礁したままの船体が横たわっている中部ジリオ(Giglio)島の首長が15日、難航する引き揚げ作業への懸念を表明した。

 コスタ・コンコルディア号は2012年1月、高速での運航中に座礁し、32人が死亡した。全長290メートルの船体を離礁させようという前代未聞の作業は、現在も進行中だ。

 しかし、島民たちが可能な限り早く座礁船の撤去を望んでいる一方で、市民保護局(Protezione Civile)のフランコ・ガブリエリ(Franco Gabrielli)長官は船体を起こす難しい作業に伴う深刻な不安材料を挙げている。引き揚げチームは天候が許せば9月には船体を起こすことができると期待しているが、作業中に座礁船が壊れ、大量の洗浄剤や腐った食料、下水といった汚染源となり得る積み荷が流出する恐れがある。イタリア環境省は船体が壊れた場合に起こり得る汚染について先ごろ調査を開始し、16日には潜水調査員が船体の下方の水を採取した。

 一方、島民を喜ばせようとジリオ島に近づいて座礁し、多重過失致死や救助義務違反などを問われているコンコルディア号のフランチェスコ・スケッティーノ(Francesco Schettino)船長は17日に出廷。この裁判で2度目となる。同船長は環境犯罪についても問われている。

 ジリオ島の首長セルジオ・オルテッリ(Sergio Ortelli)氏はAFPの取材に対し、汚染のリスクは「存在しない」と語ったが、引き揚げ作業が翌夏まで続くことがあれば、「難破船」によって島の観光業が損失を受けるのは3シーズン目になると嘆いた。同首長によると、金融危機の影響もあるが、2012年にジリオ島を訪れた観光客は28~30%減となった。(c)AFP