【7月9日 AFP】インターネットで健康関連の情報を検索する患者のプライバシーが危険にさらされている可能性があるとの研究が、8日の米医学誌「米国医師会雑誌(Journal of the American Medical AssociationJAMA)」に掲載された。

 研究を発表したのは米ロサンゼルス(Los Angeles)にある南カリフォルニア大学(University of Southern California)の研究者、マルコ・ヒューシュ(Marco Huesch)氏。ヒューシュ氏は、健康に関連したさまざまなウェブサイトで「うつ病」「ヘルペス」「がん」などの検索を行ったところ、そのデータが収集・追跡されていることを確認したという。

 ヒューシュ氏は、ウェブサイト自体やユーザーのパソコン内にある追跡プログラムを通じて「第3者に情報が漏れており、機密性が脅かされている」と述べ、症状などが公になることで「恥となる」だけでなく、「労働市場で差別を受ける」可能性もあると指摘した。

■大手20サイトを調査、7サイトで検索ワードが外部流出

 研究の対象には、米国立衛生研究所(US National Institutes of Health)や米食品医薬品局(US Food and Drug Administration)の公式ページの他、健康情報サイト「WebMD」、減量サービスのウェイトウォッチャーズ(Weight Watchers)など、アクセスの多い20のサイトが選ばれた。

 訪問したウェブサイト内に含まれている第3者機関を検出するため、フリーのプライバシー保護ツール、「DoNotTrackMe」と「Ghostery」が使われた。また、ユーザー側で作成されたデータが第3者機関に送信される状況を監視するためには、商用ソフトの「Charles」を用いた。

 結果、第3者機関による何らかの追跡要素は、20サイト全てに含まれていた。どのサイトにも少なくとも1つの第3者機関の要素が含まれており、平均は6~7だった。

 また、第3者機関によるユーザーのトラッキング(行動の記録と追跡)は、20サイトのうち13サイトで検出された。13サイトのうち7サイトでは、ヒューシュ氏の行った検索がトラッキングをしている第3者機関に漏れていた。特にソーシャルメディアサイトのプラグインの効果が大きく、これらは13サイトのうち5サイトで検出された。

 米SNSフェイスブック(Facebook)の「いいね!」ボタンなどのプラグインは「ユーザーがソーシャルメディアにログインしてなくても、またユーザーがそのボタンを押さなくても、ウェブサイトでトラッキングをすることができる」とヒューシュ氏は指摘する。

 さらに同氏は、情報収集に対して規制が実施されるまでの間、医師と患者らはウェブ閲覧時にフリーのプライバシーツールを利用するか、専門団体や政府研究組織などが管理するウェブサイトを通じて検索を行うべきだと推奨した。(c)AFP