【7月8日 AFP】南アフリカのネルソン・マンデラ(Nelson Mandela)元大統領の子ども3人の遺体が家族の許可なく改葬された一件で、親族のなかでくすぶっていた権力や金にまつわるスキャンダルがいっそう混迷を深めている──。反アパルトヘイト(人種隔離)の象徴とされてきた同氏の危篤状態が伝えられる中、親族間の内紛のニュースは南アフリカ国民をいら立たせている。

 ノーベル平和賞受賞者のマンデラ氏は、アパルトヘイト政策への反対活動により27年間を獄中で過ごした。後に黒人初の大統領となり、同政策を推進していた白人支配層と和解したことについては世界的に有名だ。

 しかし、94歳のマンデラ氏が危篤状態にあるなか、元大統領の最終的な埋葬場所について対立する親族間の内紛は、家族の確執を描くメロドラマさながらに、国民の目の前で展開されている。

 グラサ・マシェル(Graca Machel)夫人をはじめとする親族の15人は先ごろ、2011年に他の親族の了承を得ず、元大統領の子ども3人の遺体を一家の故郷の村クヌ(Qunu)から別の場所に移した元大統領の最年長の孫、マンドラ・マンデラ(Mandla Mandela)氏(39)を告発している。移動された遺体については4日、裁判所が元の場所に戻すよう命じた。

 マンドラ氏は4日、遺体がクヌに戻される直前に記者会見を開き、親族を非難した。特に「分裂と崩壊の種をまいた」として、元大統領の長女マカジウェ(Makaziwe)さんを名指しした。この模様はテレビで全国放送された。

「身内の恥」を公の場にさらけ出すことはしないとしたマンドラ氏だったが、兄弟のムブソ(Mbuso)氏が自身の妻を「妊娠させた」と発言。さらに、別の兄弟2人が婚外子であることにも言及した。

■元大統領の埋葬地は──?

 元大統領の最終的な埋葬地をどこにするかについても論争の的になっている。マンデラ氏本人はこれまで、死後は両親と3人の子どもたちが眠る故郷のクヌに埋葬してほしいと述べていた。

 しかし親族らは、マンドラ氏が元大統領の埋葬場所をムベゾ(Mvezo)にしたいがために、子供たち3人の遺体を動かしたとしている。

■国民の間に広がる衝撃

 親族間の内紛を目の当たりにした国民の間では衝撃が広がっている。

 南アのもう1人のノーベル平和賞受賞者、デズモンド・ツツ(Desmond Tutu)元大主教は一連の内紛について声明を発表。「どうか、私たちが自分のことばかりを考えずにいられますように。(内輪もめは)マディバ(Madiba、マンデラ氏の愛称)の顔に唾を吐きかけるようなものだ」と述べた。

 だが、スキャンダルは広まる一方だ。

 マンドラ氏は2度、結婚している。離婚した最初の妻は、土地の所有権をめぐって同氏の隣人らと争っているという。

 また、元大統領やマンドラ氏と同様、アフリカ民族会議(ANC)所属の国会議員だった元大統領の前妻、ウィニー・マンデラ(Winnie Madikizela-Mandela)氏も、1980年代に子どもを誘拐したとして有罪判決を受けた。

 さらにウィニー氏は2003年に詐欺の罪で有罪となったほか、親族が在籍していた上流階級の私立学校から、学費1万米ドル(約101万円)の不払いで資産を差し押さえられる寸前に追い詰められたこともある。

■「マンデラ」というブランド

 娘3人と17人の孫、12人のひ孫たちは、元大統領が政治家として活動している間は目立った行動を避けていた。だが、元大統領が2010年を最後に公の場に姿を現さなくなると、一部は「マンデラ」の家名が持つ価値を利用せずにはいられなくなったようだ。

 元大統領は、慈善活動のためであっても「マンデラ」の名前を商業目的で利用することを厳しく制限していた。しかし、孫たちのうち4人は2010年、服飾ブランド「LWTF Clothing」を設立。「LWTF」は、元大統領の自伝のタイトル、「Long Walk to Freedom(自由への長い道)」を意味する頭字語だ。

 長女のマカジウェさんとその娘ツクウィニ(Tukwini)さんも、「House of Mandela(ハウス・オブ・マンデラ)」というワイン・ブランドを立ち上げている。さらに他の孫娘2人は「Being Mandela(ビーイング・マンデラ、マンデラ一家の一員であること)」というリアリティー番組に出演し、上流社会での暮らしぶりを明らかにしている。

 一方、今年に入ってからは、マカジウェさんと異母姉妹であるゼナニ・マンデラ(Zenani Mandela)さんが、一家の資産を管理する、信託基金の理事として元大統領から任命された3人を解雇しようとしていたことも明らかになっている。理事らが家族の問題に介入しようとしたためとされているが、3人が法廷で証言したところによると、元大統領は自身の資産について娘たちによる管理を望んでいないという。

 元大統領が自伝などの印税で得た収入は、170万ドル(約1億7200万円)に上るとされている。(c)AFP/Charlotte PLANTIVE, Johannes MYBURGH